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農業機械のデザインで受賞が相次ぐクボタ。そのこだわりとは?

クボタ研究開発本部デザインセンターの東川嘉孝氏に聞く
農業機械のデザインで受賞が相次ぐクボタ。そのこだわりとは?

ドイツの「iFデザインアワード2017」を受賞した畑作用大型トラクタ

 農業機械をはじめとする産業機械で、デザインでの受賞が相次ぐクボタ。長く使われる製品にふさわしく、自社らしいデザインを目指す。現状の取り組みや今後の方針など、東川嘉孝研究開発本部デザインセンターデザインチーム長に聞いた。

―デザイン部門の体制は。

「トラクターや建設機械などの製品を最初から最後まで一括でみる担当者と、内装やグラフィックといった要素を横断的にみる担当者が連携している。目指しているのは、どの機械でも誰がみても当社製品だと分かるような“顔”をつくっていくこと。製品に統一感を出すには、横串の機能が重要になるため、専門性の高いデザイナーの採用を強化している」

―社内ではどのような役割を担っていますか。

「事業部を後方支援し、技術者と顧客の間にたって翻訳する立場だと考えている。技術者が顕在的なニーズに応えていくのに対し、デザイナーは顧客の奥底にある潜在的なものを掘り起こし具現化していく。将来的な生活様式の変化や機械と人の関わりなどを予測し、ビジョンを描いて現実に落としこむ」

「産業機械のデザインは前に出過ぎず、デザインを感じないぐらいがよい。農業機械は30年、40年と使う人がいるので、普遍的な機械をつくらないといけない。ムダをそぎ落とし、いかにシンプルにしていくかが重要だ」

―用いる技術や手法は進化していますか。

「基本的に、仮想現実(VR)、正確には複合現実(MR)技術を試作前に使うようにしている。設計者も研究者も、はやい段階で最終形を確認できて、課題を解消できる。費用低減や開発時間短縮につながり、完成品質も高められる」

―今後の展開は。

「デザイナーの上にたつようなクリエーターを育て、クリエーターを指揮するマネジャーを増やしたい。海外の主要拠点にはデザインスタジオをおき、現地の人材採用といった現地化も考えていかないといけない」

東川嘉孝氏

(聞き手=大阪・窪田美沙)
日刊工業新聞2018年1月9日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
機能とデザインが密接にかかわってくる産業機械。デザインを決め手に機械を選ぶ人は少ないとは思いますが、それでも使う人に長く愛される自社らしいデザインを目指して進化を続けています。

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