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「東洋のマンチェスター」が人口減少、高齢化に挑む

モノづくりで街おこしなるか?
「東洋のマンチェスター」が人口減少、高齢化に挑む

今年10月の大正・港オープンファクトリーでの工場見学会

 人口約270万人の大都市大阪市の中に、人口減少と高齢化に悩む行政区がある。南西部にある大正区だ。大正区は2013年から地元の製造業と連携。区民と企業のよい関係の構築を通じ、この難題の解決に挑み、街の活性化を模索している。街おこしイベント、工場見学会、修学旅行の誘致などで区民と企業が身近に接し、地元の高校生が地元企業に就職する成果なども出始めた。(大阪編集委員・青木俊次)

 大正区は大阪市の臨海部に位置し、人口は大阪市24区中最下位の6万4000人余り。1940年の約13万8000人がピークで、65年の9万5000人からは減少を続ける。人口に占める65歳以上の割合は、24区中最も高齢化が進む西成区の約30%に次ぐ25%強。

 明治期には紡績、製材、造船などで栄えたエリアだった。大阪市の資料によると、従業員4人以上の企業数は81年の452社をピークに、現在は約189社に減少。製造品出荷額も最高だった94年の3698億円を境に、14年時点で2548億円まで落ち込んだ。

 この状況に同区は13年、「大正ものづくりプライド」と銘打った活動を始めた。モノづくりの伝統や技術力を同区の「誇り」や「価値」として発信しつつ、企業と区民で共有する狙いだ。地元企業や大阪商工会議所などと構成する「大正ものづくり事業実行委員会」が推進する。
 
 同年11月には、モノづくり体験を通じ区民に地元企業の製品や技術を知ってもらう「大正ものづくりフェスタ」を実施。参加者は、13年度が約700人、14年度は約800人、15―17年度は各1000人を超え定着した。

 同区の技術力の発信にも力を入れる。その一つが、モノづくり現場を見学する「大正オープンファクトリー」。工場見学会は従来、区民向けだったが、15年11月に参加対象を区外に広げ製造業17社が参画した。

 見学会後は商店街や観光地を巡り、観光振興にも一役買う。2日間に188人が鋼板の切断や和菓子の製造を見学。沖縄から移住した区民が多いことから“リトル沖縄”と呼ばれる、平尾の商店街や水門などを観光した。

 16年度の参画企業は22社、見学会参加は196人。17年度は港区が加わり「大正・港オープンファクトリー」として24社が参画。参加は180人。増減はあるが、こちらも定着してきた。

 さらに、14年から試験的に始めていた修学旅行向けの工場見学ツアーを16年から有料化して本格化した。費用は1人当たり1000円程度と廉価。表札作りや壁紙張りといった体験が話題になり、16年度は57社が参画し14校1149人が見学。17年度は11月末現在、参画が58社、11校993人が見学。どの活動も着実に育っている。
日刊工業新聞2017年12月25日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
かつて大阪が東洋のマンチェスターと称されたのは、明治期に大阪紡績会社(現東洋紡)の工場がこの地に建設され、繊維産業のメッカになったから。そんな産業の街が衰退し始めてから久しいが、どう反転させるのか。都心部からほど近い立地を生かしたいところだ。ちなみにJR大阪環状線の大正駅は、贔屓チームのホームグラウンドである京セラドーム大阪の最寄り駅。球場も大正区かと思っていたが、こちらはお隣の西区でした。

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