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アルミニウム部品の旋削加工、H2Aロケットの実績引っさげて

奥田製作所、航空機エンジン用の拡大狙う
 奥田製作所(栃木県鹿沼市、中山航社長)は、H2Aロケットなど宇宙ロケット関連の大型アルミニウム部品の旋削加工を中心に手がける。2016年7月には、工場を増設して新たに直径3000ミリメートルクラスのターニングセンターを導入し、航空機産業に参入した。今後はより精度をあげることで、取り扱う品目数の拡大につなげていく。

 新工場は17年1月に本格稼働し、航空機エンジン用アルミ部品を製造している。新規参入した航空機分野はロケットなど宇宙産業と比べて扱う製品量が多い。中山社長は「宇宙産業で培った技術力を生かし、安定した品質の量産にチャレンジしたいという思い」で分野拡大に踏み切った。

 一方、中山社長は「量産性のメリットを生かすためにも加工時間を短縮するなど生産性の向上が課題だ」と強調する。生産性の向上につながる独自の治工具のため、段取り時間の短縮を念頭に置く。

 稼働率向上の一環で、同社独自の治工具を開発するなどして「外段取り」を可能にした。これにより、マシンの稼働中の段取りを実現した。中山社長は「当社には板金加工部門があるため、生産性の向上につながるようなスピード感を持った治工具の開発や製作を実現できる」と説く。

 人材面では、これまで中途採用が中心だったが、技能継承を強化するため、17年4月からは新卒採用に力を入れている。そのため、ベテランでなくても作業しやすいように各工程に工夫を凝らすなど作業しやすい環境を整備している。

 人材育成しやすい環境整備の一環で、ターニングセンターなどでは材料を治工具で固定する際のボルトの締め具合を独自技術で数値化している。

 抑える力が強すぎると製品に歪(ひず)みができてしまうため、数値化して適度な力の入れ具合を身につける。そのほかにも「未経験者でも即戦力となれるよう、分かりやすい作業手順書を作成している」(中山社長)と話す。
(文=栃木・前田健斗)
日刊工業新聞2017年12月18日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
1990年以来、大型アルミニウム合金リングの旋削加工で宇宙産業に携わってきた。加工で発生する加工歪みを大幅に抑える独自の技術が強みだ。航空機産業参入の際は「ものづくり・商業・サービス革新補助金」や日本政策金融公庫など金融機関の融資など各種支援を受け、大規模な設備投資を実現した。 (日刊工業新聞栃木支局・前田健斗)

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