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中国市場で快進撃のホンダ、EV新車投入で勢い止めない!

来年に中国専用SUV投入、「ヴェゼル」ベースで
中国市場で快進撃のホンダ、EV新車投入で勢い止めない!

「ヴェゼル」(ホンダ公式ページより)

 ホンダは中国で電動車両を拡充する。2018年に小型スポーツ多目的車(SUV)の現地専用電気自動車(EV)を発売し、早ければ20年にプラグインハイブリッド車(PHV)も投入する。EVは現地のカーシェアリング向けにも供給する。EVなど新エネルギー車(NEV)の製造・販売が19年から義務化されることに対応しつつ市場の成長を取り込む。

 中国専用EVは小型SUV「ヴェゼル」のプラットホーム(車台)を採用し、現地の合弁会社2社のブランドでそれぞれ製造・販売する。モーターや電池をはじめ、部品はほぼ現地調達する。18年4月に北京市で開幕するモーターショーでモデル車を初披露する。

 同EVは、ホンダが18年2月に出資予定のリーチスター(北京市)のカーシェアサービスにも供給する。消費者にEVの魅力を訴求し、カーシェアサービスとEVの拡販につなげる。

 PHVは20―21年をめどに投入する。グローバルモデルを採用するか中国専用車にするかなどのラインアップは今後決める。ホンダは米国で「クラリティPHV」を12月から展開しており、18年夏には日本にも投入する計画。

 中国政府はEVとPHV、燃料電池車(FCV)をNEVと定め、19年に自動車メーカーに対して生産・販売台数の10%をNEVに義務付ける規制を導入する。20年には比率を12%に引き上げる方針で、自動車メーカーにとって電動車両の生産・販売戦略の重要性が増している。

 ホンダは中国で合弁会社2社による商品戦略が奏功し、事業が拡大している。販売台数は18年3月期に139万台と5年連続の過去最高更新を計画しており、19年3月期も140万台以上を見込む。

中国本部長インタビュー


 ホンダが中国市場で快進撃を続けている。2018年3月期は139万台の販売台数を計画し、5期連続の過去最高更新を狙う。今後も自動車需要の伸びが見込まれる一方で、自動車メーカーに対して新エネルギー車(NEV)の生産・販売を義務づける「NEV法」の導入が決まるなど環境規制の強化が急速に進んでいる。中国本部長を務める水野泰秀執行役員に今後の戦略を聞いた。

 ―中国事業が好調な要因は。
 「スポーツ多目的車(SUV)を中心にこれまで仕込んできた商品が花開いたことに加え、全面改良を控えるセダン『アコード』の販売の勢いが衰えていない。またハイブリッドシステムや安全装備などの技術面を評価されている点も販売拡大に大きく貢献している」

 ―18年の市場環境をどう見ていますか。
 「中国全体ではGDPと同程度の伸び率6―7%を保つだろう。特に内陸部で伸び代がある。当社の販売台数では18年3月期に139万台を見込んでいるが、うまくいけば140万台を狙えると考えている。19年3月期はさらにそれを上回る台数を目指す。一方で19年に導入されるNEV法への対応と、工場の生産能力の増強をどうするかが課題だ」

 ―NEV法により19年に10%、20年に12%のNEV生産・販売が課せられます。対策は。
 「NEV法は、クレジットの価格や購入先など詳細部分で不明な点がまだ多い。ただ、それらも18年中には決まってくると見ており、我々としては電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)のNEV対象車をどう販売するかが重要だ。そのため18年から、現地合弁会社2社で小型SUVの電気自動車(EV)の製造・販売を始める。PHVについても現在検討中で、できるだけ早い時期に投入したい」

 ―生産能力の増強も必要では。
 「現地の合弁会社2社の年間生産能力は計108万台で、現在はフル操業の状態だ。3交代制や特別シフトを組むなどして生産台数増加に対応しているが、武漢市に建設中の新工場が19年に稼働を始めるまでは働き方の工夫などで対応する。また広州市の工場についても増強を検討したい。ただNEV法などの動向によって事業環境が変わる可能性もあるため、それらの規制に対応しつつ能力増強を判断する必要がある」

 ―現地カーシェアリング会社への出資を決めました。
 「中国では自転車のシェアリングが普及しており、カーシェアの事業インフラも整っている。出資を通じてカーシェアの事業ノウハウを学びつつ、当社の車両なども供給する。また18年に投入するEVをサービスに活用することも考えている」
日刊工業新聞2017年12月20日/22日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
18年に投入するEVは小型SUV「ヴェゼル」ベースとなるもよう。中国では近年、地場の自動車メーカーも価格競争力と品質向上により「手ごわい存在」(水野執行役員)だ。ホンダとしては走りの性能や乗り心地、安全性能を訴求する方針。NEV法をクリアーしつつ成長を遂げる上で、EVでもホンダらしさを武器に需要を取り込めるかがカギとなる。 (日刊工業新聞第一産業部・土井俊)

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