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MRJ大ピンチ!ボーイングがライバル企業の買収を協議

MRJ大ピンチ!ボーイングがライバル企業の買収を協議

米ワシントン州モーゼスレークで飛行試験に向かうMRJ(三菱航空機提供)

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは21日、米ボーイングがブラジルの航空機メーカー・エンブラエルの買収に向けて交渉していると報じた。報道を受けてボーイングとエンブラエルはコメントを発表し、「提携の可能性に関して議論している」と認めた。

 エンブラエルは近年、座席数100席前後の「リージョナル機」市場を席巻し、国産リージョナルジェット機「MRJ」を開発する三菱航空機(愛知県豊山町)の最大のライバルでもある。買収が実現すれば、ボーイングと深い関係にあるMRJ、ひいては日本の航空機産業全体にとって致命的な事態となりかねない。その理由と背景を、日刊工業新聞の過去記事を元に探る(※引用する情報は掲載当時のものです)。

顧客サポートでボーイングが協力も


 三菱航空機(名古屋市港区)は22日、リージョナルジェット機「MRJ」のカスタマー・サポートを米ボーイングが提供することで合意した。部品調達・在庫計画の策定などに24時間365日体制で対応。サービス・メンテナンス用ウエブサイトも開設する。MRJは計130機を受注している。サポートを充実し、新規受注につなげる。

2011年6月23日付日刊工業新聞



契約見直しに発展する可能性


 三菱航空機はカスタマー・サポートと呼ぶ領域でボーイングからの支援を受けている。「整備・修理のシステムを借りている」といったイメージだ。航空会社からすれば航空機は利益を稼ぎ出す道具なわけで、民間航空機は可能な限り稼働率を高めることが求められる。機体が地上にいる状態=飛べない状態は業界では「AOG」(Aircraft on Ground)と呼ばれる。数年に一度の大きな点検の時を除き、AOGをなるべく避けることが必要になってくる。そのためには空港から近い場所に整備拠点や補修部品の拠点を作り、ちょっとした不具合などで部品交換が必要になった場合には技術者が飛んでいかなくてはならない。

 新規参入者の三菱航空機にとって、こうしたカスタマーサポート体制の構築は労力のいる作業だった。親会社の三菱重工業は長年、ボーイング向けに機体構造(主翼や胴体など)を生産しており、その関係性を生かしてボーイングに頼ったのである。しかし、エンブラエルの買収が成立すれば、ボーイングと三菱航空機はリージョナル機市場で競合関係となる。MRJのカスタマーサポート提供はまさに「敵に塩を送る」ようなもので、契約の見直しに発展する可能性があるだろう。

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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本の航空機産業が米国に依存するリスクの大きさを改めて感じます。何かに依存すればそれに振り回されるのは世の常。MRJをどうするか、そして中長期的に日本の航空機産業をどう大きくするか。大戦略が必要です。こういう時こそ、産学官の"オールジャパン"に期待します。

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