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目薬一滴から体重まで計測できる小型センサー、あらゆるモノに搭載可能

名大が実用化へ。計測幅は一般的な荷重センサーの約1000倍
目薬一滴から体重まで計測できる小型センサー、あらゆるモノに搭載可能

目薬一滴から人の体重まで計測が可能な小型荷重センサー(中央)

 名古屋大学工学研究科の新井史人教授、室崎裕一特任助教らは、目薬一滴から人の体重まで幅広い範囲で重さを計測できる小型荷重センサーを開発した。単結晶のみで水晶振動子を作ることで実現した。どこにでも装着でき、重さや硬さや圧力、気圧など多彩な計測が可能。ロボットをはじめあらゆる物に搭載し、常に計測できる。企業と連携を図り、2018年の実用化を目指す。

 センサーの主要部である素子の大きさは2ミリメートル角。最小が分解能0・4ミリニュートンで重さ約0・04グラムを計測でき、最大が分解能600ニュートンで重さ61・18キログラムを計測できる。一般的な加重センサーと比べ1000倍の計測幅を持つ。理論的には、ネズミの体重である約30グラムと電車1両の約30トンを同じセンサーで同時に計測できる。

 振動子を支える部分を水晶単結晶にしたほか、軸を合わせる部分の構造を工夫して温度変化の影響を抑えた。1度Cの温度変化で受ける影響は1ミリニュートン(0・1グラム)。

 人と接するロボットに搭載すれば、制御や安全性確保に必要な情報を少ないセンサーで取れるようになる。また、クッションに搭載して座った人のデータを分析すると、人の体重、呼吸、脈動といった情報を常に抽出できる。「被計測者が何も着けたり意識したりしない」(新井教授)で健康情報を把握できるようになる。

 今後、水晶振動子メーカーとの連携を目指す。現状の制作費は1個当たり約1000円。量産時には同数十円に下げたいという。

 新井教授は米電気電子学会(IEEE)会員。微小電気機械システム(MEMS)やロボット技術を使って細胞など微細な物を制御する研究を続けている。
日刊工業新聞2017年12月20日
石橋弘彰
石橋弘彰 Ishibashi Hiroaki 第一産業部
 センサーを着けたクッションに座ってみた。パソコンにセンサーにかかる荷重がリアルタイムに表示される。座って体重がかかる大きな波が表示されるが、その波を拡大すると小さい波がある。それが、拍動によるわずかな体重の変化だそうだ。人工知能(AI)でノイズとなる荷重を取り除くことができれば、高精度に座った人のあらゆる情報をとり続けられる。ウエアラブル機器を着けるのが面倒な人にうってつけだ。

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