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腕時計、高価格帯伸びる

業績に底打ち感、業界は変革迫られる
腕時計、高価格帯伸びる

TRUMEをつけたエプソンの碓井稔社長(中央)

 2017年の腕時計(ウオッチ)業界は、株価上昇による資産効果もあり高価格帯商品の売り上げが伸びたほか、経済が堅調な中国で販売が増加した。16年は訪日外国人(インバウンド)需要の減少などが響いたが17年は業績に底打ち感が出てきた。

 一方、米国市場は百貨店流通の低迷に加えスマートウオッチの普及が進み不調だった。米国や中国ではインターネット販売が増加。多様化する商品嗜好(しこう)や流通への対応が課題となっている。

 シチズン時計の戸倉敏夫社長は「今までのように同じ商品をどの流通でも売る方法は通じない」と話す。現在同社は、買収した海外ブランドと販社統合を進めて一つの流通に提供できる商品を広げている。今後は流通ごとの消費者ニーズにきめ細かく対応した商品企画も検討していく。

 セイコーウオッチ(東京都中央区)は、主力ブランド「グランドセイコー(GS)」を独立させた。セイコーホールディングスの中村吉伸社長は「女性向けやスポーツ、ラグジュアリーモデルを広げて攻める」と意気込む。11月には世界初のGS専門店を米国に開くなど、デザインと販売の両面でGSの存在感を高める方針だ。

 カシオ計算機は主力の「G―ショック」の発売35周年を契機に20カ国で商談会を開催してマーケティングを強化する。一方、セイコーエプソンはアナログ仕様では初の独自ブランド「トゥルーム」を7月に立ち上げた。センシング技術を組み合わせた高機能型の商品で市場を開拓する。

 米IDCによれば腕時計型ウエアラブル端末の21年の世界出荷台数は17年比2・3倍の1億6100万台に達する見込み。また、今後はeコマース(電子商取引)拡大で消費者の商品選択肢が増える。
日刊工業新聞2017年12月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
各社がウオッチを拡販するためには独自性あるブランドと商品開発で消費者に訴求できるかがカギとなる。今後は各社の特徴ある戦略競争が活発化してウオッチ業界は転換期を迎えることになりそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・田中明夫)

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