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村田製作所が「空気を読む」感覚を可視化

センサー核にプラットフォームビジネス
 村田製作所がプラットフォーム(基盤)ビジネスに乗り出した。仮想センサー基盤「NAONA(ナオナ)」だ。「空気を読む」という人間ならではの感覚を可視化するのが特徴で、2018年中にも商用化する。基盤とセンサーなどの電子部品を組み合わせ、新たな需要の創出を狙う。

 「この人がいると、いつも会議の雰囲気が明るい。そうでない人との違いは何なのか」―。仕事の実績であれば明確に数値化できるが、実際の人間関係は「主観」に基づいて構築される。こうした情報を可視化すれば人材開発の現場にも生かせる、というのがナオナの活用例だ。

 こうしたアイデアを村田製作所は「空間のインターネット(IoS)」という独自の概念で呼ぶ。技術・事業開発本部の笹野晋平マネージャーは「物にセンサーを付けて情報を取得するIoT(モノのインターネット)の上位概念として、空間にある関係性を測りたい」と説明する。

 例えば、音声データに人間の主観的な情報を紐(ひも)付けた「教師データ」を人工知能(AI)に与える。その上で、飲食店やオフィスなどに設置したマイクから音声データを取得し、データを照合して場の盛り上がりなどを判定する。モーションセンサーや温湿度センサーなども使えば、分析対象を拡大できる。

 同社はITベンチャーのウフル(東京都港区)と連携し、ナオナの構想からシステム構築まで進めてきた。商用化については、顧客にIoTサービスを提供するシステムインテグレーターにナオナを提供して運用する。部品事業と同様、IoTでも“黒子役”に徹する考えだ。

 足元では産業分野を中心にIoTが普及し、工作機械など生産設備に搭載するセンサーといった部品需要が増している。ただ産業向けの部品はスマホなど電子機器向けに比べて耐用年数が長く、いずれ特需は尻すぼみになる。笹野マネージャーは「IoTの世界では部品需要が縮小し、これまでの部品売りだけでは稼げない」と打ち明ける。

 基盤ビジネスへの参入は、こうした将来の需要減を見据えたものだ。このため基盤の収益化よりも、センサーや無線通信モジュールといった部品事業との相乗効果をどう生み出して稼ぐかが重要になる。
                  

(文=京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年12月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
鴻池健弘執行役員兼新規技術センター長は、将来のビジネスモデルについて「部品開発に一生懸命になるだけでなく、どうセンシングしたら面白いかを企画しないといけない」と語る。部品事業を軸としつつ、高付加価値の事業をどう拡大するのか。手探りの状態が続く。 (日刊工業新聞京都総局・園尾雅之)

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