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大手電力会社は新規参入企業に「意地悪」?再エネ接続拒否の真相

大手電力会社は新規参入企業に「意地悪」?再エネ接続拒否の真相

大手電力は送電線に「空き」がないと説明

 再生エネルギー事業者にとって、送電線に電気を送ることが難しい状況が続いている。東京電力福島第一原発事故以降、太陽光や風力の発電施設が急増したため、一部地域では送電線の空き容量がなくなっているからだ。中長期での安定運用を訴える電力会社側に対し、新規参入者からは電力大手が送電網を独占する問題点を指摘する声も聞こえてくる。

意地悪


 「いかに日本の電力会社が言い訳で意地悪をしているか」―。11月6日、ソフトバンクグループの孫正義社長は2017年4―9月期の決算発表の場で、日本の電力会社の姿勢を批判した。サウジアラビアなど海外で電力事業を推進する背景には日本では電力会社が送電網を独占し、発電してもつながらないからだと指摘した。

 16年以降、東北や北海道を中心に再エネ業者が接続を断念する動きが出てきている。大手電力が保有する送電線に空きがなく、再エネ業者は送電線の増強に莫大(ばくだい)な費用負担を求められるからだ。
 孫社長の指摘は「本当に空きがないのか」という疑念だ。京都大学の安田陽、山家公雄両特任教授の調べでは、東北地方4県(青森・秋田・岩手・山形)の500キロボルトと275キロボルトの主要幹線14本の16年9月から17年8月末までの送電線の年平均利用率は、2%から18・2%だった。

余裕がない?


 対象とした幹線はいずれも「空き容量ゼロ」と公表されたルートだ。両氏は「各平均利用率を単純に平均すると1割程度となる。混雑時間はゼロである。この数字を見る限り、余裕がないという説明はつきづらい」と指摘する。

 こうした乖離(かいり)はなぜ起きるのか。電力会社は送電線に流れた量ではなく、送電線につながっている全ての発電所がフル稼働近くに運転することを前提に、利用状況を計算している。実際に流れている量は関係なく、設備容量で判断している。そのため、稼働を停止していたり、建設を中断していたりする原発や定期点検中の発電所も計算に織り込まれる。停電などのトラブルに対応できるための容量も確保している。

短期視点でなく


 東北電力の原田宏哉社長は11月の会見で「できるだけ再生可能エネルギーの接続にお応えしたい」と述べながらも、「(容量が)空いているように見えるのは瞬間の一断面」と指摘。「送電線の建設や運用は一朝一夕にできない。5年後、10年後は明日のようなこと」と短期的視点でなく、中長期での電源構成の必要性を強調した。

 電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)も定例会見で、孫社長の発言に対して、中長期でのエネルギーミックスの重要性を示している。電力関係者からは「我々も電力広域的運営推進機関のルールに基づいて空き容量を計算している。『意地悪』とは心外」との声も聞こえてくる。

 広域機関の委員会では送電線を効率的に運用する観点から、空き容量の算出法も議論されている。
日刊工業新聞2017年12月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
再エネ普及が進む海外と接続ルールが違うのは事実。

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