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戦略的M&Aが実を結んだ日本電産、車載モーターの本丸へ攻め込む

仏PSAと合弁の主役とは?
戦略的M&Aが実を結んだ日本電産、車載モーターの本丸へ攻め込む

永守日本電産会長兼社長(左)とルボルニュPSA副社長

 フランスの自動車メーカーのグループPSA(パリ)と車載向けの駆動モーター事業で手を組むことになった日本電産。電気自動車(EV)化が進む中、いよいよ部品メーカーとして自動車の本丸へ本格的に参入することになる。

 PSAは世界第9位の自動車メーカー。16年度の売り上げ規模は550億ユーロ(約7兆円)、販売台数は430万台。23年には自動車のラインアップの80%をEV化する見込みだ。

 日本電産の仏子会社である日本電産ルロア・ソマーホールディングと仏PSAオートモービルス(ポワシー)が折半でフランスに合弁会社を設立、日本電産が経営トップを派遣する。従業員は当初60人。製品の量産開始は21―22年。量産開始後に日本電産の連結対象となる見込み。量産に向けては2億2000万ユーロ(約300億円)を投資する。

 合弁会社は主にPSAに製品を提供し、将来は他の完成車メーカーへも販売する。すでに両社で製品の設計などを手がけている。

 永守重信日本電産会長兼社長は「今後、部品の供給が変わってくる。我々、部品メーカーが完成車メーカーなどの系列取引を超えて製品を提供していくことになる」と強気だ。ジル・ルボルニュグループPSA品証・生産担当副社長も「EV化に向けて最良のパートナー」と日本電産に期待する。

 今回の主役の日本電産ルロア・ソマーホールディングは、かつての米エマソン・エレクトリックグループ。2017年2月に完了したM&A(合併・買収)が、戦略的な形で実を結ぶことになった。

 これまでの電動パワーステアリング(EPS)用モーターや、次世代ブレーキシステムなどとあわせて、車の基本的な制御である「走る」「曲がる」「止まる」を全て提供していく。日本電産は9月、ギアボックスやインバーターを含めた駆動モーターシステムも開発しており、グローバル市場が一気に見えてきた。

日刊工業新聞2017年12月5日の記事を修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
EVモーターではホンダは日立AMSと組んだ。エネルギーマネジメントのノウハウは完成車メーカーの中にとどまるが、ハードとしての駆動部品はどんどんアウトソースされていくだろう。サプライヤー側は単なる部品供給だけにとどまるのか、それとも自動車全体の制御などに踏みこんだものになるのか。相手先や地域などによってもビジネスの仕方は変わってくるだろう。

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