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女性起業家支援を取り巻く環境と知的財産保護の課題

パワーエンハンスメント社長 三根 早苗 氏インタビュー
 ―起業を志したきっかけは何ですか。
 「医薬品メーカーで大手製薬会社向けに医薬中間体を研究・開発する仕事をしていたが、10年以上の開発期間をかけても取引先の都合により開発中止になってしまうことがままあった。自分の意思ではどうしようもない決定により振り回される仕事に、このままここにいても自分の成果が世の中に出ないかもしれないと感じた。エンドユーザーに接して目の前で感謝や成果を感じられることを仕事にしたいと思い、2002年、趣味として習っていたネイル・アロマのサロンを起こした」

 ―その後女性起業家支援を始めた理由は。
 「起業家支援を本業にしようと思ったのは13年前。創業当時の自分は技術さえあればなんとかなると考え、経営や営業について学ぶことなく起業してしまっ
た。経営を実践しながら必要な知識に気付かされる日々だった。経営知識について学ぶ場も無くこのままではいけないと思い、周囲の同じ悩みを抱える経営者を集めてノウハウの共有や勉強会などを行うようになった。コミュニティができ、後輩女性起業家へのアドバイスなども行い始めた。現在は、事業計画作成のアドバイスや当社のコミュニティを生かしたテストマーケティングの場の提供などを行っている。起業したいけれど何から始めればいいか分からない女性の最初に相談する場所となって、一人ひとりの才能を生かした起業の支援をしていきたい」

 ―女性起業家が抱えがちな課題は何ですか。
 「女性起業家の多くがサービス業での創業を考える。身近な問題への気付きから、誰かの役に立ちたいという思いが根底にある事業が多い。そのため現場志向が強くマネジメント側へステップアップできず、事業を拡大できないなどの問題を抱えているケースが多い。そのほかに、無形商材を扱うサービス業ではネーミングが非常に重要だが、商標や意匠など知的財産に関する知識が不足しているためにトラブルに巻き込まれるケースもある」

 ―知財に関するトラブルを防ぐには。 「まず、知財に関する基本知識を身に付ける必要がある。知識がなければ、知らないうちに他人の商標を侵害している可能性がある。当社が活動する関西では、近畿経済産業局が主催する知的財産活用セミナーが継続的に開催されているので、そういった場への参加をすすめている。また、起業家支援者の知的財産に関する知識もまだまだ十分ではない。支援者向けの知財セミナーなどが開催されれば、知的財産を活用した企業経営が活発になるのでは」

 ―関西における女性起業家をとりまく環境をどう見ていますか。
 「関西全体で女性起業家を育てる土壌は整いつつあると感じている。近畿経済産業局の女性起業家応援プロジェクトの中核イベントであるLED関西を中心に、さまざまな起業支援・創業に関わる組織を横断的にネットワーク化できている。これによって起業を目指す女性のそれぞれのステージに合わせたサポートができるようになった。支援者の横のつながりを生かして、起業当時の自分のような女性を1人でも多くサポートしていきたい」
(聞き手=阪野 友香)
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女性起業家応援セミナー “オリジナルの守り方”講座
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ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
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