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文科省の科研費チーム、大学の研究力を「厚み」で評価する新指標−中間層の論文に着目

 文部科学省の科学研究費助成事業の研究チーム(代表者=自然科学研究機構・小泉周特任教授)は、大学の研究力を評価する新指標を作成した。研究者の中間層が優れた論文を出し続けている状況を研究の「厚み」と着目して数値化した。一般的な大学ランキングで注目される論文の「数」「被引用数」では計りきれない強さを評価する。全国立大学などの各分野を同指標で分析した結果も公表。文科省も新指標の活用を各大学に促す方針だ。

 研究チームは中堅大学の伝統などとして続いてきた研究の「厚み」について、研究者個人を評価する既存手法を応用して作成した。具体的には各大学の過去数年間の論文を被引用数の多い順に並べる。次に例えば「10回以上引用された論文が10本ある」大学なら、「厚みは厚い」と判断。

 一方「3回以上、引用されている論文が3本ある」大学なら「厚みは薄い」とみなす。単純に被引用数を比較するのではなく、その内訳も問う仕組みだ。

 これを使い、東アジアでトップのシンガポール国立大学型を東京大学など日本の研究大学型と比べた。シンガポール国立大型は被引用数は多いものの、中間研究者層が弱く厚みは薄い。スター研究者による突出論文が目立つためだ。これに対し日本の大学は裾野が広く、違いが分かる。

 この指標は国内外の大学、全学・分野別のいずれでも使える。例えば岐阜大学の獣医学で見ると、トップ論文は少ないが厚みは厚い。研究型大学以外でも、特定分野の学術での貢献が分かる新指標として注目されそうだ。
   
日刊工業新聞2017年11月16日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
対象が何にしろ評価は、関係者すべてが納得する手法を確立するのが難しい。企業人の仕事の評価もそうだ。そのため、時々に見直して変更したり、切り口の異なる複数の評価法が流通したりするのは、仕方がないと思う。 今回の評価の新指標は「本学は研究型大学ではないが、△分野の伝統と歴史があり、学術研究できちんと貢献している」と考える多くの国立大学にとって、使いたい指標になるのではないか。

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