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未来社会をつくる研究が集結 JST「未来社会創造事業」今年度55件採択

代表者は2件が30歳代、10件が40歳代
未来社会をつくる研究が集結 JST「未来社会創造事業」今年度55件採択

未来社会創造事業公式ページ

 科学技術振興機構(JST)は社会・産業のニーズに対応する技術の支援事業「未来社会創造事業」の2017年度の初年度採択55件を決めた。産学官から寄せられた621件から選んだ。「超スマート社会」領域では富士通の「データ中心で異種システムを連携するサービス基盤」など、2社4大学の6件を採択した。

 未来社会創造事業のうち、重点公募テーマが特徴の「探索加速型」では、未来社会イメージから4領域の社会ニーズを掘り起こし、研究課題を選定した。

 このうち「持続可能社会」領域は「製品ライフサイクル管理と革新的解体技術」(早稲田大学)など7件だ。また、「安全・安心社会」領域は「マルチビュー画像計測によるエネルギー輸送インフラの運用」(東京工業大学)、「都市浸水リスクのリアルタイム予測」(東京大学)、「スマート健康パッチによる水分マネジメント」(東北大学)など17件。同領域には共同研究機関として延べ11社が参画する。

 一方「低炭素社会」領域では、「二酸化炭素からのガス・ツー・リキッド触媒技術」(富山大学)や「鉛フリーのスズペロブスカイト太陽電池」(九州工業大学)など22件が採択された。

 同領域の代表者は2件が30歳代、10件が40歳代と若手・中堅が目立った。

    

日刊工業新聞2017年11月9日



来年度JST助成、競争的資金配分見直し−文科省、支援プログラム 2事業に集約


 文部科学省は2018年度から助成金のファンディング(競争的資金の配分)を改革する。科学技術振興機構(JST)の助成事業が対象となる。現在展開中の各種支援プログラムを統合・再編し、科学的な潮流が出発点の「戦略的創造研究推進事業」と、社会・産業へのニーズに対応する「未来社会創造事業」の二つに集約。科学的にも社会・経済的にも重要で革新的なテーマを産学官で議論しながら新たに選定する。

 従来、基礎研究で優れた成果を出しても実用化にはつながらないことが課題だった。改革により、効率的なイノベーション創出につなげる。具体的には、科学動向調査や研究者アンケートのほか、企業アンケートや経済団体の提言などを参考に、生命科学や自動運転といったテーマを選んでいく。基礎から実用化までをつなぐことを重視し、産業界の協力も得ながらプログラムを走らせる。

 JSTの戦略的創造研究推進事業は、ノーベル賞級の成果の実現を掲げた基礎研究支援。JST予算の約半分を占める。国際的な科学技術動向の延長線上に研究開発の高度化を目指す「フォアキャスト型」で、「クレスト」などがある。

 17年度からは、これとは逆に社会・産業課題を解決するために研究開発を進める「バックキャスト型」の「未来社会創造事業」がスタートしている。改革では、基本的にこの2事業に各種支援プログラムを集約していく。すでに大学などで生まれた研究成果を実用化につなげる「エーステップ」や「アクセル」などのプログラムの新規採択は取りやめており、改革に備えている。

    

日刊工業新聞2017年8月28日

山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
未来社会創造事業は公募型で注目を集めたが、JSTのファンディング(競争的資金の配分)改革の柱という点でも大きな位置付けとなっている。JSTには数多くの助成事業があるものの、それぞれ単発の成果で終わり、社会変革につながっていない、という反省に基づく改革だ。具体的には2018年度から既存助成事業を、科学的な「戦略的創造研究推進事業」と、社会・産業ニーズに対応する今回の「未来社会創造事業」に統合していくとしている。

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