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どこまで伸びる?電子部品各社の業績

大手6社の4-9月期連結決算
どこまで伸びる?電子部品各社の業績

「市場的に悲観するところはない」(村田製作所の村田恒夫会長兼社長)

 電子部品6社の2017年4―9月期連結決算が1日までに出そろい、4社が増収、営業増益となった。各社とも車載向け部品などが好調で、18年3月期連結決算業績予想は全社が上方修正した。ただ17年10月以降の下期は米アップルの新型スマートフォンの販売不振に伴い、スマホ向けビジネスで不透明感が漂っており、慎重な見方もある。スマホ向けや特定顧客からの依存脱却が奏功するか、今こそ真価が試される。(渡辺光太、京都・園尾雅之)

 「下期に向けては不透明感がある」―。各社の決算会見では、下期の業績について一様に慎重な見方が目立った。

 主な要因は、アップルの新型スマホが伸び悩んでいることにある。新型スマホの販売が振るわなければ、サプライヤーへの発注が減る恐れがある。現時点では「大きな影響はない」(石黒成直TDK社長)との声が大勢を占めるものの、下期に向けては「慎重に見る」(気賀洋一郎アルプス電気取締役)と、警戒を緩めていない。

 一方、17年4―9月期連結決算は、部品各社の多くが好調を維持。村田製作所は同期の受注高と9月末時点での受注残高が過去最高を更新した。同社の村田恒夫会長兼社長は足元の状況について「市場的に悲観するところはない」と説明する。アルプス電気もスマホ向けカメラアクチュエーターがけん引し、電子部品事業全体では4―9月期ベースで過去最高となった。

 TDKは北米のスマホ向けに二次電池や受動部品、センサー製品が好調に推移した。

 一方、ロームはスマホ向けの非接触充電用制御ICや手ぶれ防止用ICが好調だった。「新しい製品で(新市場に)参入する」(澤村諭社長)と力を込める。

 またスマホ以外では、産業・車載向け部品事業がスマホ向けと同等の規模にまで成長しており、利益面に寄与している。日本電産は車載・産業向け事業の17年4―9月期営業利益が、前年同期比38・2%増の386億円となり、利益面で初めて、スマホ向けなど精密小型モーター事業を抜いた。特に電気自動車(EV)向けトラクションモーターの引き合いが強く「世界全体が本格的にEVへ向かっている」(永守重信会長兼社長)ことが追い風となった。

 京セラは17年4―9月期の営業利益が同2・1倍となり、特に「産業・自動車用部品」の事業利益が同2・3倍と顕著に伸びた。京セラの谷本秀夫社長は「(組み立て工程や設計工程について)まだ一貫した自動化(体制)ではない」と説明。生産改革を推進し、さらなる増益を狙う。

 特定顧客への依存から脱却しつつ、事業の多角化も進めており、電子部品各社の業績が底堅くなってきた。下期にかけてアップル向けのリスクが残るものの、新事業の創出やリスク分散で安定的な収益体制を継続する構えだ。
                       

日刊工業新聞2017年11月2日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
スマホ依存は不安だけど、車載や産業向けが伸びている―。こんな業界構図がいったい何年続いているのか。まったくデジャビュ(既視感)です。でも各社の業績は順調に伸びています。半導体業界ではシリコンサイクルによる好不況の波がなくなったと言われますが、電子部品はなおさら。数年後には2兆円企業が並んでそうな勢いだけど、最大のリスクは何だろう。良くも悪くもアイフォーンの影響もかつてほど大きくはなくなっているような気がするし・・・。

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