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経産省の電炉再編論にクギ!鉄連会長「あくまで個社の判断」

「鉄スクラップを再生するリサイクル産業。資源循環型社会に大きく貢献する重要な業界だ」(柿木会長)
経産省の電炉再編論にクギ!鉄連会長「あくまで個社の判断」

会見する日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長

 日本鉄鋼連盟の柿木厚司会長(JFEスチール社長)は22日の定例会見で、経済産業省が普通鋼電炉業界へ再編を促したことに、あくまで個社の判断で行われることだとクギを刺した。供給過剰や電力料金の上昇で厳しい事業環境にあり、再編が重要な選択肢であることは認めたものの、競争力の維持・向上へ、どのような施策をとるかは個々の企業が主体で行うべきだと強調した。

 電炉再編は経産省が19日にまとめた「金属素材競争力強化プラン」に盛り込まれた。同じく過当競争が続く石油元売り業界や石油化学業界と同じく、産業競争力強化法50条の適用も検討し、官主導で再編を促す姿勢をみせている。

 柿木会長は電炉再編が「三つのアイテムの中の国内製造基盤強化戦略の一つなのに、そこだけ大きく取り上げられたのは多少、遺憾」と前置きした上で、「鉄スクラップを再生するリサイクル産業であり、資源循環型社会の構築に大きく貢献する重要な業界だ」とその社会的意義を強調。経産省へ適切な対処を求めた。

 一方、5月の国内粗鋼生産量が9カ月連続で前年割れしたことについて「量はそこそこ予想していた数字」と冷静に受け止めつつ、「7―9月期の真ん中辺りから需要が戻ってくる」と予測。年度の生産量も先月予想した1億700万―800万トンの見通しを変えなかった。

 また、7―9月期の原料価格がさらに約1割下がることで決着。製品価格に跳ね返る可能性については「人手不足や物流費高騰もある。下がったとはいえ、大きな幅ではないので、需要家と真摯(しんし)に話し合える環境にある」として、大きな影響はないとの見方を示した。
日刊工業新聞2015年06月23日 素材・ヘルスケア・環境面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 柿木会長が会見で「遺憾」と言ったことに正直意外な感じがした。先週末の競争力強化プランに盛り込まれた時点で、ある程度業界団体との“すり合わせ”が済み、業界の総意として再編が進み始めたと、思ったからだ。ただ、再編が重要な選択肢であることは認めたとあるから、鉄連会長という立場もあって、あまり会員企業を刺激したくないのでは、とも感じた。  記事にもあるが、電炉製品は地域の建設需要に依存し、製品そのものの差別化も難しくて、電気代が安い時間帯に操業する低い設備稼働率はネックだ。さらに電気代やスクラップ価格の変動に左右されやすい解消すべき課題は山積みだ。  経産省が設定した2-3年のタイムリミットは、言い換えれば、五輪特需など建設需要は安定的にある好機である。このタイミングを逸するとまた判断が難しくなる。

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