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アンドロイドはついに電気羊の夢を見る? 写真から幻想的なイメージ自動作成

グーグルの研究者、人工神経回路による〝アート〟公開
アンドロイドはついに電気羊の夢を見る? 写真から幻想的なイメージ自動作成

赤茶けた木の写真をもとに人工神経回路が修正した画像の例(グーグル)

 あらかじめ人工神経回路に認識させておいた画像をもとに、ソフトウエアが新しい画像イメージを自動的に作りだす。そんな成果を米グーグルの研究者がブログで公開した。これまでのソフトウエアに画像を認識させるやり方とは、いわば正反対のアプローチ。与えられた画像の中から人工神経回路がパターンを見いだし、特徴を認識させておいた動物や建物、物体などのイメージと融合させることで、時に美しく幻想的な、さらにはシュールで不気味な画像をコンピューターで描き出すことに成功している。

 人工神経回路は情報を入力して出力するまで10-30層もの処理レイヤーを持つという。その中で、最初の低位レイヤーが画像のエッジやコーナーを抽出、中間レイヤーで全体の形や構成要素を見出すための基本的な特徴を解釈し、最終段階のレイヤーでこれらを組み合わせる。

 今回の研究では、人工神経回路が画像の特定のパターンを例えば雲の模様を「犬」や「鳥」などと解釈し、レイヤー間でフィードバックループをかけ解釈したイメージの部分を強調しながら、画像に修正をかけて完成させる。
 
 何層もの深い夢をテーマにした映画の「インセプション」にならってか、こうした手法で描かれた一連の絵の流派をグーグルの研究者は「インセプショニズム」と名付け、ネット上のギャラリーに公開した。

 写真や絵をベースにしたものだけでなく、細かい色の点が混ざったランダムノイズの画像から、求められたイメージを見つけ出す実験にも挑戦したが、こちらはまだ厳しい様子。「バナナ」では黄色く細長い物体が何本か写り、バナナと見えなくもないというレベル。「パラシュート」や「ネジ(Screw)」はアートな感じながら、それらしく見え、「ヒトデ(Starfish)は全くそのもの。しかもカラフルで美しい。

 ただ、「ダンベル」では、作成したどのイメージも、重りの部分と一緒にダンベルを掴んでいる人間の腕も再現してしまっている。つまり、腕が写り込んでいないダンベルだけのイメージを、ソフトウエア側に「ダンベル」と認識させておく必要があったわけだ。

 機械が夢に目覚めた、といえるのかどうかわからないが、コンピューターを使った新しいアートの誕生には間違いなさそうだ。
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
「コンピューターが意識に目覚め人類を絶滅させた後、人間が洞窟に描かれた原始的な絵を発見した時のようにこの画像を振り返るのではないか」。グーグルのブログに冗談めかした読者の書き込みがあった。意識どころか、知能レベルとしては確かにまだまだ。でも、「インセプション/インセプショニズム」の名前の通り、当の研究者たちは新たな歴史の「始まり」と考えているのかもしれない。

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