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小型衛星700個で地球すっぽり、空から高速インターネット実現へ

英ワンウェブのビッグプロジェクト、仏エアバスDSが協力
小型衛星700個で地球すっぽり、空から高速インターネット実現へ

ワンウェブの衛星インターネットサービスのイメージ(エアバスDSのサイトから)

 約700個の人工衛星を高度1400km以下の低軌道に打ち上げ、地球を包み込むようにして電波を飛ばすことで、地上のどこからでも高速インターネット接続を可能にー。ベンチャー企業のワンウェブ(英国チャンネル諸島)のこうした壮大な事業プランが実現に向けて動き出した。欧エアバス・グループの仏エアバス・ディフェンス・アンド・スペース(エアバスDS)が小型衛星の設計製造パートナーに決まり、スペアも含めて合計900個のインターネット通信衛星の製造に入る。2018年にも地球周回軌道への衛星打ち上げを始める計画という。

 製造するのは重量が150kg以下の低コストの小型衛星。エアバスDSが最初の10個を仏トゥールーズの工場で設計製造し、その後、場所は明らかにしていないものの、米国内の専用工場で日量最大4個の割合で量産する。ワンウェブ創業者のグレッグ・ワイラーCEOによれば、プロジェクトにかかる費用は15億ドルから20億ドルとしている。

 低軌道のため、高い通信性能が確保できる利点があるという。地上には低コストのターミナル装置を置き、衛星通信に使うKuバンドの周波数帯域で衛星と情報をやりとりする。このターミナル装置を利用し、周辺地域や空の上でLTE、3G、Wi-Fiでのインターネット接続が可能になる。

 ワンウェブのプロジェクトには英ヴァージングループと米クアルコムが資金援助しており、ヴァージン創業者のリチャード・ブランソン氏と、クアルコム会長のポール・ジェイコブズ氏がワンウェブ取締役会に名を連ねる。ヴァージンとクアルコムの出資額は明らかにされていない。

 ワイラーCEOはもともと2007年に設立されたO3bネットワークス(英チャンネル諸島)の創業者。O3bは高度8000kmの中軌道にある衛星からKaバンドを使ってインターネット通信サービスを提供し、2013年以降、仏タレス・アレーニア・スペースの設計した8つの衛星を打ち上げた。アフリカ・中東、中南米、アジア太平洋を中心にサービスを展開している。

 その間、O3bは2013年にグーグル、HSBCなどから出資を受け、グーグルのグループ企業に仲間入り。それに伴いワイラー氏もグーグル幹部となるが、2014年にグーグルを辞め、ワンウェブの前身のワールドビュー・サテライトを設立。今年に入って社名をワンウェブに変更した。

 ワンウェブは当初、イーロン・マスク氏率いる米スペースXと提携交渉を進めていたが、どちらが主導権を握るかで折り合わず、交渉は不調に終わったと報道されている。そのスペースXも、独自の衛星インターネットプロジェクトを進めており、今年1月にはインターネット通信衛星の開発拠点をシアトルに新設すると発表。さらにグーグルとフィデリティがスペースXのプロジェクトに計10億ドルを出資している。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
低コストの小型衛星を活用したサービスは、新しい宇宙ビジネスとして今や注目の的。日本でも東大発ベンチャーのアクセルスペース(東京都千代田区)が小型衛星で取得した画像データや気象データを気象情報サービスのウェザーニュースに提供し、商業ベースに乗せている。宇宙は科学の探求の場からビジネスの場へ。日本からもっともっと宇宙ベンチャーが出てきてほしい。

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