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「軽」復調に日本らしい進化あり

世界も注目する「小さいエコカー」、次は安全性を競う
「軽」復調に日本らしい進化あり

「タント」(ダイハツ工業公式ページより)

 国内新車販売で軽自動車人気が復調の兆しを見せている。2017年4―9月期の車名別販売台数上位10車種のうち6車種を軽が占めた。軽は14年度以降の消費税と軽自動車税の増税の影響で苦戦が続いていたが、ようやく回復基調に入った。軽の競走軸は、「広さ」などに加え「安全性」も重要視される始めている。

 軽の好調の要因としては、増税前の先食い需要の反動減がなくなったことが大きい。一方で、新型車も好調だ。販売トップだったホンダの軽「N―BOX」は、9月の全面改良により前年同期比10・6%増の9万4601台と伸びた。今後もリニューアル効果が期待される。

 「N―BOX」のような車高が高い「モアスペース系」という新ジャンルを開拓したのがダイハツ工業の「タント」。その「タント」は先日、2003年11月に発売以来の累計販売台数が200万台を達成した。14年目での達成は同社の主力軽自動車「ミラ」、同「ムーヴ」に次ぐ速さ。

 「タント」などをきっかけに、軽は移動手段としてだけでなく、いろいろなシーンで便利に使えるクルマづくりを各社が競い合うをようになった。ポイントは運転のしやすさ、乗り降りのしやすさ、広さの3点。

 その多様性に最近は、「安全性」が加わった。新型「N―BOX」は先進安全技術「ホンダセンシング」を軽として初めて採用。衝突軽減ブレーキなど基本の8機能のほか、オートハイビームと後方誤発進抑制の新機能を追加し全タイプ標準装備にした。

 またプラットフォームも刷新し、サブフレーム脱落構造などを採用。室内空間とともに、衝突安全性能も高めている。

 スズキも今年、4年5カ月ぶりのフルモデルチェンジして発売した「ワゴンR」に軽として初めて衝突被害軽減システムを採用。ダイハツからOEM(相手先ブランド)供給を受けているSUBARU(スバル)だが、「ステラ」の一部改良にあたって、ステレオカメラを採用した衝突回避支援システムを標準装備、同社のブランド価値を高めた運転支援システム「アイサイト」のイメージをそのまま軽にも持ち込もうとしている。

 日本の独自規格として生まれた軽が、現在の走行性能や安全性能を獲得するまでにはずいぶん年月を要した。スズキの鈴木修会長は「軽は限られたスペースを上手に使ってデザイン、性能、技術で魅了する芸術品」と胸を張る。

 欧州などでも「使用材料も製造エネルギーも小さいエコカー」として、最近の進化に注目している。一方で軽自動車は利益率の低さが課題でもある。安全機能の充実によって、内製コストや部品調達の改善も欠かせない。
日刊工業新聞2017年10月3日の記事に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
次は軽自動車とEVの融合。モーターショーでもその一端が見られるでしょう。

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