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京急は沿線のポテンシャルをもっと生かせる

三浦半島の海から羽田まで
京急は沿線のポテンシャルをもっと生かせる

京急グループ公式ホームページ

 京浜急行電鉄を核とする京急グループは「都市生活を支える事業を通して、新しい価値を創造し、社会の発展に貢献する」を経営理念としている。高度経済成長をけん引した京浜工業地帯への通勤路線として発展。京急の名を冠して沿線で提供する生活サービスに地域住民からの信頼は厚い。常に意識してきたのは“豊かで住みやすい沿線づくり”だ。

 前身の大師電気鉄道設立から119年。京浜間を結び、工場への電力供給や誘致、住宅地の開発と京浜地域の基盤を作った。ここに合流したのが湘南電気鉄道だ。設立趣意書には「三浦半島は風光明媚(めいび)にして環境が良い。東京から2時間、横浜から1時間。ここに鉄道を通そう」との文言が残る。1925年に資金を募ると、4年後には早くも開業を迎えた。京急はいまだに当時敷設した線路や設備を使い続けている。

 原田一之社長は「当時のパワーはすごかった。当社の原点だ」と解説する。一度たりとも変わらないのは、生活の足を守る使命。ダイヤの乱れが発生した際の臨機応変な回復力は他の鉄道事業者も一目を置く。全線87キロメートルを効率良く動かしているのはシステムではない。「人の手。独自のノウハウがある」と原田社長は断言する。

 全社一丸となって取り組むエネルギー。それは羽田空港への延伸にも現れた。「将来の発展に不可欠だ」との信念で実現。京急にとって、空港アクセスはこの上ない沿線住民への付加価値になった。

 京急は19年秋、本社を東京都港区から横浜市西区に移転する。エリアの重心に本拠を置くことで、より一層の“豊かで住みやすい沿線づくり”を目指していく考えだ。

 三浦半島では京浜工業地帯が空洞化した影響で住宅需要が低迷する。一方、再開発を進める品川では今後、オフィスが数多くでき、羽田への人の流れも、さらに盛んになりそうだ。住環境の魅力を訴求し、三浦半島への移住を呼び込むなど「品川や羽田の潜在力を沿線に波及させる」(原田社長)と活性化に意気込みを見せる。
               

【企業概要】
 京浜急行電鉄は2018年2月で創立120周年を迎える。日本で3番目、関東では最古の電気鉄道。鉄道営業キロ数87キロメートル、1日当たりの平均乗降人数は253万人。現在の本社は路線最北の泉岳寺駅に併設する。鉄道・バス・タクシーの交通事業を核に、不動産やホテル、レジャー施設を展開。沿線各所に百貨店やスーパー、保育施設、葬祭場、自動車教習所も運営する。再開発を構想する品川駅周辺には約6万平方メートルの土地を持つ。

日刊工業新聞2017年10月05日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
京急は品川、羽田という切り札ももちろんありますが、個人的には三浦半島をもっているのが大きいなと思います。今は若干地味なイメージの三浦半島ですが、京急などが中心となって、海を生かした観光関連施設の開発や、そのPRを積極的にやっていけば、ドル箱に生まれ変わるポテンシャルをもってる気がします。

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