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介護効率化“待ったなし” 介護従事者不足で、製品・サービスに知恵

トイレ用手すり、移動器具、ベッドなど
介護効率化“待ったなし” 介護従事者不足で、製品・サービスに知恵

排せつ介助の負担軽減が望まれている(マツ六のトイレ用手すり)

 介護機器や福祉機器各社が、要介護者の自立支援や介助者の負担軽減につながる製品・サービスに知恵を絞っている。高齢化の進展で介護需要の増加が見込まれるものの、労働力人口の減少や離職率の高さから介護現場の人手不足は深刻だ。介護の効率化は“待ったなし”で、最新の製品・サービスで現場改善に貢献していく。

排泄動作を研究


 住宅建築関連資材の専門商社であるマツ六(大阪市天王寺区)は、トイレ用手すり「たよレールrest(レスト)」シリーズを拡販する。

 手すり先端の形状や傾斜を工夫することで、利用者が前傾姿勢をとってスムーズに立ち上がれることを目指した。軽く体を前に傾けると肛門と直腸につく角度が鈍角になり、排せつ物が通過しやすくなる効果もあるという。

 マツ六の幹部は「設置のしやすさに重きが置かれ、利用者の視点が二の次になっている製品もある」と分析。たよレールについては「排せつの動作を研究してつくった」とし、月間1000台の販売を目指している。人による介助なしで排せつができる事例が増えれば、介護従事者の負担軽減につながる。

 無線機器の開発や販売を手がけるジーコム(東京都大田区)は、サービス付き高齢者向け住宅などの中で入居者がスタッフを呼び出すシステム「ココヘルパG」を2018年2月をめどに発売する。

 スマートフォンを使ってスタッフ側から部屋にいる入居者へ呼びかけを行える機能を、ココヘルパシリーズとしては初めて標準搭載する予定。離れた場所からでも意思疎通がしやすくなる効果が期待できそうだ。

 無線の採用により、有線を使った他社製品に比べて工事がしやすく、初期費用は3割程度安くなる見通しという。「介護業界では無線が医療機器へ影響するのではないかとの不安があったが、スマートフォンの普及で提案しやすくなった。介護従事者が不足する中では業務効率化は必須だ」(同社営業部)。

最新ベッドで現場改善


 福祉機器の輸入販売を手がけるケアフォース(東京都千代田区)は、要介護者の移乗や動作支援に利用する補助器具をそろえた。

 ベッドからストレッチャーなどに要介護者の移動をスムーズにできる「ロールボードビジョン」は、介助者の腰痛や身体的な負担を軽減する。「要介護者も離床しやすくなり、“寝たきりゼロ”につながる」(椎名康一取締役営業本部長)と期待を込めている。
ケアフォースの「ロールボードビジョン」は、介助者の腰痛や身体的な負担を軽減する

 パラマウントベッドは介護施設向けベッドの新ブランド「エスパシアシリーズ」を18年冬に発売する。省スペース設計や垂直方向の移動性などに加え、同社の見守り支援システム「眠りスキャン」との連動性が特徴だ。

 利用者の睡眠や呼吸、心拍数などをベッドの操作端末に表示すことで、「スタッフが見回りの時などに要介護者の状態を早めに気付くことができる」(技術開発本部)という。

 シーホネンス(大阪市東成区)の在宅介護用ベッド「コア・ネオ」は軽量・簡単・快適がコンセプト。総重量は71キログラムと従来比29%軽量化し、ベッド一式を軽自動車に最大2セット搭載できる。

 「レンタル事業者でも女性の従業員が増えている。女性一人でも運びやすい」(ケプロコア営業部)。組み立てに必要な配線や工具がなく、現場で作業しやすいのも特徴だ。

 フランスベッド(東京都新宿区)の「自動寝返り支援ベッド」は、要介護者の寝返りをベッドが自動で行う。特に少ない職員で対応が求められる夜間などで効果を発揮する。
フランスベッドが発売した「自動寝返り支援ベッド」

 実は同ベッドは約20年前に開発したものの、ニーズが合わずに製造を中止していた。だが、旧モデルを導入していた施設から強い要望があり再発売を決めた。「今は人材不足が課題。時代のニーズに合っている」(同社)と期待している。
(斎藤弘和、編集委員・村上毅)
日刊工業新聞2017年10月3日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
便利な新製品は増えていますが、その情報を介護従事者にわかりやすく周知する活動も必要そうです。

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