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「東京ー名古屋」は空飛ぶクルマで。日本は乗り遅れるな!

世界で来年以降に実用化を予定
「東京ー名古屋」は空飛ぶクルマで。日本は乗り遅れるな!

ドイツのスタートアップ「リリウム」のプロトタイプ(同社の発表資料から)

 自動車業界は自動運転技術開発が話題の中心だったが、次は空飛ぶ車の時代だ。

 基本的機能は「道路を走行できるサイズだが、空中移動もできる」というもの。この範疇(はんちゅう)で、大きく分けて飛行機の翼にあたるものが伸びてきて空を飛ぶタイプ(滑走路にあたるものが必要)、プロペラがついていてヘリコプターのように空を飛ぶタイプ(その場で離陸可能)がある。

 中にはモーターボートのように水上移動もできるもの、さらに自動運転技術との合わせ技で、目的地まで自動で運んでくれるといったものも開発されている。

 この話を聞いても「そんなもの飛ばす場所がないだろう」と思いがちだ。たしかに、日本は過密化して規制も厳しくてそうかもしれないが、実際には海外メーカー数社が来年以降実用化を予定している。

 それどころか、開発・生産の目途が立っていて、すでに、予約販売が開始されようとしている。1台当たりの価格は安くても5000万円以上、さらに、広大な私有地などを持っている一部の富裕層だけが現在の販売ターゲットだが、空飛ぶ車が現実のものとなるのは確実な状況だ。

 国内でも6月頃から各種経済誌やテレビでも取り上げられる機会が急増している。きっかけは日本版空飛ぶ車開発のプロジェクト、カーティベーターがトヨタグループから出資を受けたというリリースによるものだろう。

 しかし、トヨタグループの出資はわずか4250万円。海外では、大手IT企業などが数十億単位での投資を行っておりスケールが違う。

 カーティベーターでは2020年の東京オリンピックでの聖火台への点火を空飛ぶ車で行うことを開発目標としているとのことだが、その頃、海外では空飛ぶ車によるタクシーの実用化が予定されている。国内でも動きが活発化しているのは好ましいものの、まさに“周回遅れ”といった印象だ。

 日本は過密化と規制の問題で実用化は相当先だが、世界的には待ったなしの状況である。

 空飛ぶ車は、移動や輸送手段を大きく変えることになる。プロペラがついたヘリコプター型の空飛ぶ車はバッテリー性能等の問題で当面は100キロ―300キロメートル程度の距離を飛ぶのが標準的なものになると予想される。

 これにより変革が起きるのは山間部や離島への移動だろう。大量の物資を運ぶには向かないが、ちょっとした観光であればドライブ感覚で行ける。通常の道路を運転していって、道が険しくなったら空に飛び立つ。

 着陸したらまた車として利用するといった具合だ。幹線道路から遠く離れた地方の食材を大都市にまさに産直で届けることも可能だ。

 東京から名古屋間は約300キロメートルで、現在は新幹線、将来はリニアモーターカーでの移動が予想されるが、空飛ぶ車ならわざわざ駅まで行く必要がなく、渋滞もない空を飛んで行ける。大都市間のビジネスでの移動は空飛ぶ車が主流になるだろう。

 こんなことを言っても空飛ぶ車にはヘリコプターや飛行機の運転技術が必要だという声もある。実際に人間が運転するのならその通りだが、すでに空飛ぶ車でも自動運転技術が開発されつつある。無人運転により、その利便性は格段に高まる。

 空飛ぶ車による、派生事業もたくさん考えられる。

 こういった新しい乗り物では必ずといっていいほど、キャラクターグッズ、ミニチュア商品、プリントTシャツなどが商品化される。アミューズメント分野でもカーレースに変わるゲームができるだろう。数ある空飛ぶ車の中から車種を選んで、あえて人による運転技術を競うような、陸と空をまたにかけたレーシングゲームができるだろう。

 現在の自動車産業と同様のディーラーやメンテナンス体制が新たに構築される可能性もある。製造会社が既存の自動車メーカーではないので、新規参入のチャンスが生ずる。
カーティベーターが開発中の機体(カーティベーター提供)

(文=佐々木陽三朗 中小企業診断士)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
エアバスにグーグル創業者のペイジなど世界の役者は豪華。日本は?

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