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宇宙空間をエンターテインメントで活用!人工流れ星やVRを楽しもう

ALE・愛知工科大など
宇宙空間をエンターテインメントで活用!人工流れ星やVRを楽しもう

将来、都市で人工の流れ星を眺めることができるかもしれない(ALE提供)

 宇宙をエンターテインメントの場として活用する動きが加速している。低コストで済む超小型衛星を利用することで、人工の“流れ星”や宇宙空間で撮影した画像を使った仮想現実(VR)コンテンツの実現など、誰もが宇宙を楽しめる時代がそこまで来ている。

 人工の流れ星を作り出し、打ち上げ花火のように鑑賞する―。そんな魅力的な提案に世界のメディアが注目した。宇宙ベンチャーのALE(東京都港区)が発案元だ。軌道上の超小型衛星「ALE」(エール、仮称)からパチンコ玉大の金属の粒を放出。大気圏で燃え尽きる際の発光現象を利用して流れ星を作り出す。

 2018年後半に初号機を打ち上げ、19年に広島上空で流れ星を発生させる。岡島礼奈社長は「夜空の両側から流れ星を放出するなど、演出の幅を広げたい」と構想をひねる。

 衛星自体を星として活用する試みもある。愛知工科大学工学部の西尾正則教授らは、手のひらサイズの超小型衛星「AUTキューブ2」に搭載した発光ダイオード(LED)を点滅させ、人工の星を作る計画を進める。

 魚眼カメラを2個搭載し、撮影した画像を地上に送る。西尾教授は、「地上でヘッド・マウント・ディスプレーを装着し、宇宙遊泳を体感できるシステムを作りたい」と話す。

 また、かつての宇宙少年が大人になり、衛星開発に挑む例も。会社員や学生が集まった団体「リーマンサットスペーシズ」(宮本卓代表理事)は、衛星の“自撮り”機能を実証する超小型衛星を開発中だ。平日の夜や休日に集まり議論を重ね、東京都江戸川区の町工場が衛星を製作する。

 カメラを取り付けたロボットアームを伸び縮みさせ、宇宙空間で衛星が地球や宇宙を背景に自らを撮影する。現在は、衛星の基本機能を実証するための試験衛星を開発しており、試験衛星を18年に打ち上げる。

 各組織は宇宙を活用したエンターテインメントで人々を引きつけ、ビジネスにつなげるための青写真を描く。ALEの岡島社長は「人工流れ星を鑑賞する文化を作り、世界中にビジネスとして広げたい」と夢を語る。またリーマンサットスペーシズは、衛星が打ち上げ後数カ月で地球に落ち流れ星となることを利用し、これに合わせたイベントを検討中だ。

 こうした開発の中で培われた技術は新技術を生み出す可能性を秘めている。LEDを点滅させ人工の星を作る衛星AUTキューブ2は、「信号をスマートフォンで受け取るという新しい光通信手段に使える」(西尾教授)。また「自撮り画像から、衛星の破損を把握できるのではないか」(リーマンサットスペーシズ)との発想もあり、遊び心から生まれた技術が宇宙開発を加速させている。
  

(冨井哲雄)
日刊工業新聞2017年9月29日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
宇宙ときくと私たちの普段の生活とはまったく関係ないもののように思えますが、実際には宇宙を活用したテクノロジーは生活の中に入ってきています。エンタメでの活用で宇宙をもっと身近に感じられるようになるかもしれません。

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