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ドイツ・クカ、医療用協働ロボットを日本市場に投入

患者や医療従事者にどこまで受け入れられるか
 独クカは医療用協働ロボット「LBR Med(メッド)」を日本市場に投入する。各関節に高精度なトルクセンサーを搭載したことなどで、繊細な力加減や高い安全性を実現した。既に医療用電気機器の安全規格の認証を取得、11月から販売を本格化する。超音波や内視鏡検査、手術などでの利用を見込む。医療機器メーカーなどに提案し、同ロボットを含めた医療システムとして商品化する。

 LBRメッドはクカの協働ロボット「LBRイーヴァ」をベースに開発。7軸の多関節ロボットで、関節部分にあたる各軸にトルクセンサーを搭載したことなどで、細やかな力加減を実現した。

 例えば、LBRメッドのアーム(腕)の先に超音波を発するプローブを取り付けて超音波検査をする場合、医師が患者に触れるような力加減でプローブを操作できる。超音波検査では一定の検査技術の習熟が必要だが、同ロボットで力加減を指定すれば安定した画像を撮れるという。

 一方、力、速度、位置をリアルタイムにモニタリングすることで安全機能を2重化。ロボットの動作範囲の制限や設定範囲内での速度制限を可能にするなど、重層的な安全システムも構築した。

 医療機器の国際規格などの認証を取得。9月からドイツなど各国に投入した。医療用の協働型7軸垂直多関節ロボットは世界初とみられる。

 クカはこれまで放射線治療など医療向けにロボットシステムを供給してきた。一方、LBRイーヴァは自動車部品の組み立てなど、繊細な力加減が必要な熟練作業における自動化などで導入が進んでいる。

 LBRメッドは医療での豊富な実績と高性能な協働ロボット技術を融合しており、医療分野で多様な活用が期待される。
日刊工業新聞2017年9月22日
石橋弘彰
石橋弘彰 Ishibashi Hiroaki 第一産業部
医療現場で活躍するロボットといえば、米イントゥイティブ・サージカルの「ダヴィンチ」が前立腺がんの手術などで利用され、患者の負担が小さいことなどが評価を得ている。米アキュレイの「サイバーナイフ」も的確にがんの部位へ放射線を当てられることから普及が進む。だが、ダヴィンチは医師が操作するもので、サイバーナイフは患者に直接触らない。ロボットが自らの制御で患者の身体に触れる、という行為がどれだけ患者や医療従事者に受け入れられるのか、興味がある。

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