地方大学の競争力は「地域貢献」にあり。事業化見据えた研究意識高まる

「強弱を付けると、こんなに外部資金が獲得できる」

地域産業振興の核となる深紫外LEDの結晶成長装置(三重大提供)

**強弱付ける  「強弱を付けると、こんなに外部資金が獲得できるということを今、学内に明確に示している」。三重大学の西村訓弘副学長は、こんな刺激的な発言をする。文部科学省の「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」への応募に選んだのは工学部の3案件。生物資源、医学部などから公平に応募するというバランスを捨てた行動に、驚きの声が挙がった。  7月、このうち深紫外線発光ダイオード(LED)の案件が採択された。LEDを使った水処理の装置や作物成長促進で、地域の中小企業や1次産業を後押しすると期待される。獲得したのは5年間で約6億円。これまでにない大きな規模に、学内は沸いた。  核となる部局や教員、技術を厳選した結果の成功体験は、旧来の体制をゆるがす。「これから研究領域を見直す組織再編の声などが、ボトムアップであがってくるはず。悪平等を脱する組織的な改革に、地方大学がやっとできるようになった」と西村副学長は感慨深く話す。  国立86大学では2016年度から「世界」「特色」「地方」の3類型による評価が始まった。三重大と同様に地方を選んだのは約半分だ。地域貢献を軸に、事業化時点での広がりを見据えた研究意識が育ちつつある。  九州工業大学は非接触生体センサーと人工知能(AI)によるIoT(モノのインターネット)で、高齢者の見守りと自動車運転の安全性確保の2プロジェクトを走らせている。北九州市は高齢化率が約3割と、政令指定都市で最も高い。三谷康範九州工大イノベーション推進機構副機構長は「地域ニーズに応えたうえで、技術が全国各地へ広がる可能性がある」と説明する。  具体的には大学発ベンチャー「ひびきの電子」のセンサーを使い、市内の介護施設で、要介護者の見守りと介護職員の行動情報収集を実施する計画。自動車のプロジェクトでは居眠り運転防止などのセンシングユニット開発や情報分析サービスを行う。  プロジェクト参加企業は福岡県や北九州産業学術推進機構とも協力して募集している。電子部品なら地元中小企業、システムなら大企業と波及効果が見込める点も魅力だ。  こうした大学と地域との連携を文科省も支援する。地域イノベーション・エコシステム形成プログラムでは応募案件に外部専門家が周辺特許や市場価値の調査を実施し、事業化の成功率を高める。  同プログラムの16、17年度の採択件数は14件。文科省では、採用がない東北・北海道地域でも地域連携を進めるため、農林水産業を軸にプロジェクト創出を仕掛けたいとする。地方の力を底上げし、日本全体を強くする。

続きを読む

関連する記事はこちら

特集