ニュースイッチ

化学業界のクセを熟知した無駄な競争をさせないしかけ

日化協、「持続可能な開発目標」事例集作成へ
化学業界のクセを熟知した無駄な競争をさせないしかけ

国連グローバル・コンパクト・ネットワーク公式ページより

 日本化学工業協会は、世界共通の2030年目標「持続可能な開発目標(SDGs)」に貢献する活動や技術をまとめた事例集を作成する。経営に採り入れる活動編を2017年度末から18年度初めに発行し、次に事業による貢献編を作る。会員企業の先行事例を共有し、他社に参考にしてもらうことで業界としてSDGsへの取り組みを底上げする。

 国連で15年9月にSDGsが採択されて2年になるが、業界団体が事例集を作成するのは初めてと見られる。SDGsは社会・環境・経済の課題解決を30年までの目指すべき姿としてまとめた。

 食糧、環境、教育、医療などの17分野の目標がある。国連は本業でSDGs達成に貢献するように企業に要請している。

 日化協が作成する活動編には経営層への理解や社内浸透、目標設定や経営方針への反映など、社内推進の事例を収録。各社の環境・CSR報告書などから事例を集める。

 貢献の事例集は、製品や技術がどの目標達成に役立つのかを整理する参考にしてもらう。既存技術でも農薬は食糧不足の解消、断熱材や太陽光パネルの素材は気候変動やエネルギー問題の解決に貢献する。事例集で事業を整理し、社外発信にも活用してもらう。

 CSR経営を推進する国連グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの16年9月の会員調査でも「SDGsを理解する」段階にある企業が半数を占め、具体的な取り組みはこれから。

 世界経済フォーラム(ダボス会議)はSDGsを達成すると12兆ドルの経済価値が生まれるとしており、企業は貢献によってビジネス機会を獲得できる。日化協はSDGsビジョンを5月に公表した。
                  
日刊工業新聞2017年9月19日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 日本では、企業はライバルを出し抜こうと独自の研究開発を秘密裡に行い、優位性を保とうと頑張る。当然のことながらライバルと共同歩調をとることはない。一方、ライバル企業が何か新しい事業を始めたら、横並びで追随する傾向がある。この結果、競争が激化し利益なきビジネスが始まる。化学企業もその例外ではない。  日化協の素晴らしい点は、このクセを熟知しているので、各企業に情報を共有させ、無駄な競争を避けさせるところにある。持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する技術や活動を公表することが、企業のブランド価値を高め、ひいては株価を上げることを企業はある程度わかっているが、直接、利益に結び付く数字が現れてこない。それを化学企業全体で加速させるのが日化協の役割なのだ。各企業の事例をまとめ公表することにより、日本の化学企業のブランド価値を高めさせ、化学企業の底上げを図っている。

編集部のおすすめ