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酵母とマーガリンを製造する化学メーカーの「パン再発見」

カネカ、フードフェスタにフードペアリング
 食品市場は、少子化に伴う人口減少で国内は縮小し、飽和状態。食品関連メーカーは打開策として海外に打って出る一方、国内市場では競合他社との差別化を進めなければならない。パンの原料であるパン酵母(イースト)とマーガリンの両方を製造できる国内唯一のメーカーであるカネカも顧客サービスの充実に力を入れている。

 同社は2013年に女性5人からなるマーケットリサーチ(MR)グループを発足させた。パンやお菓子で「今、何が流行か」を、実際にパン屋などへ足を運び、調査している。

 食品事業を管掌するフーズ・アンド・アグリズ・ソリューションズ・ビークルの小田原努マーケットプランニング・アンド・ディベロップメント・グループリーダーはMRグループの狙いについて「味だけでなく、売り方や陳列の方法も調査する。女性に向けたアプローチも進める」と語る。

 市場情報の収集には販売子会社のカネカ食品も重要な役割を担う。全国展開し、日々顧客と接する同社は食品市場の最前線の動きをキャッチできる。カネカでは本体の食品事業担当者やカネカ食品などで構成する“市場情報交換会”を年4回実施し、情報の共有化を図っている。

 カネカの情報力が生かされる一つの例が、コンビニエンスストアに対するプライベートブランドのメニュー提案だ。コンビニ、ベンダー、原材料メーカーの3者が出席する商品開発会議で、確かな根拠に基づいた提案ができるという。

 同社が毎年開催する「フードフェスタ」は試食品を展示し、製品をアピールする格好の機会となっている。ここでも市場情報交換会で生まれた新しいパンの提案を行う。小田原氏は「今後もフードフェスタに力を入れ、我々の材料を使っているお客さまの商品が、消費者に選ばれる提案をしたい」と力を込める。

 また、頭打ちといわれる国内市場にあって、データに裏打ちされた提案力で需要をつくり出す。食べ合わせの法則を科学的に解明する“フードペアリング”によって、今までパンが食されなかった場面への進出をうかがう。

 小田原氏は「朝食のパンだけでなく、普段の夕食に合ったパンを提案できるのでは」と先を見据える。
カネカが力を入れるフードフェスタ

(文=大阪・日下宗大)
日刊工業新聞2017年8月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
個人的に化学・材料のイメージが強かったカネカ。ここまで食品分野に力を入れているとは知らなかった。炭水化物を摂取を抑えないといけない自分にとっては、血糖値が気にならないパンをできるだけ安くお願いします!

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