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新電力、早くも「淘汰時代」へ。東ガスが買収へ複数社と接触

安値提示で「勝ち目がない」との声も
 2016年4月の電力小売り全面自由化により、新規参入した事業者(新電力)の淘汰(とうた)が進みそうだ。販売電力量の新電力内でのシェアが1%程度の事業者が大半で、すでに事業買収に向けた動きも出てきている。契約を奪われた既存の大手電力の盛り返しも予想される。需要自体の大きな伸びが期待できない中、新電力の多くは岐路に立っている。

 経済産業省のまとめでは、自由化から約1年の17年5月末時点で家庭向け電力小売事業に参入した新電力への切り替えは約353万件。切り替え率は約5・6%だった。販売電力量ベースでは4月時点で家庭用電力全体の約4・6%が新電力になっている。

 とはいえ、新電力も個社ごとに事情が異なる。東京ガスなど目標件数を上回るペースで推移する事業者は一部だ。登録小売電気事業者が400社を超える中、新電力全体の販売電力量のシェアで5%以上を握るのは東京ガス(24%)、KDDI(13%)、大阪ガス(11%)、JXTGエネルギー(8%)の4社だ。

 業界内では淘汰再編が確実視されている。実際、東ガスの広瀬道明社長は日刊工業新聞の取材に、契約件数の拡大に事業買収をひとつの手段として挙げ、「(当社の)考え方に賛同して頂ける事業者がいれば譲り受けたい」と述べている。すでに複数の事業者と接触している。

 全面自由化以降、既存大手電力の安値プランも目立つ。前出の経産省のまとめでは、電力利用者が同じ社の割安な料金体系に変更したケースは約281万件(約4・5%)。東京電力、関西電力、中部電力いずれも域外での販売を拡大している。

 家庭向けの電力販売で地殻変動が起きる中、すでに自由化されていた工場など大口向けの高圧市場の競争は激化する一方だ。高圧以上の電力販売量ではすでに新電力が約12・1%のシェアを握るが、ここでも既存の大手電力会社が再攻勢に出ている。
                  

(文=栗下直也)
日刊工業新聞2017年8月25日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
新電力の幹部からは「電力小売り単体では儲からないような安値を提示して、顧客を奪われるようなケースも出てきている。勝ち目がない」との声も漏れる。

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