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苦境の関電、「大飯原発」再稼働に備え

 関西電力は17日、関電大飯原子力発電所(福井県おおい町)周辺の京都府域の安全確保のため、京都府と関係市町と安全確保などに関する協定を締結したと発表した。

 大飯原発の増設や原子炉に重要な変更を行う場合に、関電は京都府や府内の隣接市(綾部市と南丹市)に報告する必要があり、同様の内容は隣接市に近い市町(舞鶴市、京都市、京丹波町)にも地域協議会を通じて情報提供される。

 関電の岩根茂樹社長は、「京都府内のみなさまの安全安心の確保につながるよう、協定をしっかり運用する。原子力防災対策の充実強化を継続的に進めていく」と述べた。

日刊工業新聞2017年8月18日



3位に転落


 大手電力会社を取り巻く経営環境が、2016年4月に始まった電力小売り完全自由化による顧客離れなどを背景に、厳しさを増している。電力10社の17年3月期連結決算は、東京電力ホールディングス(HD)など8社の経常利益が減益。18年3月期は6社が、経常利益見通しなどを公表していない。利益改善に寄与する多くの原発の再稼働時期が不透明な上、顧客の奪い合いが激しくなる。

 17年3月期の10社合計の燃料費負担は、10社合計で約3兆4000億円だった。火力発電の燃料となる原油や液化天然ガス(LNG)の価格が下がり、前期の約4兆5000億円から大幅に減った。燃料費の変動を料金に反映する「燃料費調整制度」に基づき料金を引き下げしたことで、9社が減収となった。

 16年4月の電力小売り自由化の影響で、新電力に切り替える顧客が増えたのも影響した。家庭向け小売り契約の他社への切り替えの申込件数は、17年3月末時点で全体の約5・5%。都市部ほど新電力への切り替えが大きい。東京電力ホールディングスの広瀬直己社長は「(切り替えが)一段落したとは言えない」と警戒する。

 影響が顕著に出たのが、関西電力。約72万件の顧客が流出。17年3月期の販売電力量が中部電力に抜かれ、大手電力会社で初めて3位に転落した。高浜原子力発電所(福井県高浜町)3、4号機が5月以降にも再稼働する見通しで、その後に電気料金の引き下げを実施し巻き返しを狙う。

 電力10社の18年3月期は、四国電力のみが経常増益を予想。大半の原発の再稼働時期に見通しが立たない上、足元は火力の燃料になるLNGの価格が上昇基調にある。
                  

(文=栗下直也)

日刊工業新聞2017年5月2日

永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
東電福島原発過酷事故以降、原発には逆風が吹く。ただ、国民が安全で温暖化対策にも寄与する安定した安い電源を求めているのは間違いない。そのためには原発供給者は地域住民との安全確保のための「合意形成」が必要である。関電が、京都府と関係市町と安全確保などに関する協定を締結したのはその第1歩である。他地域の参考となるような実りある協定となることを期待したい。

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