Jリーグ「アルビレックス新潟」会長が語る地方創生と高齢者移住問題

安易な日本版CCRC構想に懐疑の目「コンパクトシティー化より中核都市を動かす施策効果が大きい」

地方創生には地元企業の革新が第一歩と語る池田氏。

 民間有識者でつくる日本創成会議が高齢者の地方移住に関する提言をまとめた。医療や介護の受け入れ態勢が整っている41地域を候補地に挙げ、東京圏から移住を促すべきだとしている。政府も元気な時から地方に移り住み将来は介護や医療サービスも受ける「日本版CCRC」構想を進める。こうした動きを地方側はどう受け止めているのか。新潟で39年にわたり医療福祉事業や学校経営に携わり、サッカーJリーグ「アルビレックス新潟」会長や日本ニュービジネス協議会連合会会長としても知られる池田弘氏に地方創生のあるべき姿を聞いた。  ―日本創成会議の提言では高齢者の移住候補地のひとつに新潟県上越市が挙がっています。  「そうだろう。当グループが経営するサービス付き高齢者住宅でも、すでに入居している利用者が首都圏から兄弟を呼び寄せるケースが増えているし、県内在住者が冬場だけ利用するなど利用形態は多様化している」  ―すると、高齢者の地方移住は実現性の高い政策といえますか。  「(創成会議が)地方移住のあり方に一石を投じた意義は大きいが、移住を促す前に取り組むべき課題は多い。最も重要なのは、地場企業を中心とした地域経済の活性化。経済や雇用を支える中堅企業が革新性を発揮し、若者のチャレンジ意欲を受け止め、そこで働きたいと思わせる。若者を含むあらゆる世代を惹きつけ、スポーツや文化面でも暮らしへの充足度が高い地域にこそ、移住は促進される。既存施設の需給バランスからアプローチする施策は現実的ではない。地域経済に影響力の大きい中堅企業を強烈に応援する視点が重要だ」  ―それが高齢者を含めた人材誘導につながると。  「地方移住はこれまでの暮らしから完全に切り離されるものではなく、社会経験や人脈を発揮できるコミュニティーが備わってこそ。日本版CCRCも同様だが、単に施設が空いているから地方に誘導する発想では税財源の問題以上に移住促進の原動力とはならないのではないか」  ―まちづくりの面でも生活圏として一定の機能を備えた中核都市の潜在性や可能性に着目した施策を実施するべきだと指摘していますね。  「一定の経済規模を持つ中核都市は、多様な生き方を実現できるからだ。昨今の施策はコンパクトシティー化に力点が置かれているが、都市機能を再構築しなくても老朽化したインフラ整備など必要最小限の対策を講じるだけで、暮らしやすさは向上する。地方創生は中核都市を動かす施策効果が大きいと考える」    <プロフィール>  池田弘(いけだ・ひろむ)国学院大学で神職を学び1977年新潟市の愛宕神社宮司に就任。同年新潟総合学院を開校。代表を務めるNSGグループは30校を超える専門学校や大学、医療福祉施設や商社、ホテルなども運営。起業支援にも取り組む。新潟県出身、65歳。    【記者の目】  スポーツ不毛の地と呼ばれた新潟に新たなコミュニティーを根付かせた池田氏。スタジアムを埋め尽くした4万人が味わった一体感は「『わが街』を考えるきっかけとなった」と話す。地方発展は、そこに住む人が地元に誇りを持つことが一歩であり、それが新たな人を呼ぶことにつながる。目先の人材還流ばかりに目が向けられがちな地方創生だが足元を見つめ直すことの大切さを実感する。(聞き手=神崎明子)

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