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来年度からキッズウィークでUターンラッシュ見納め?

休暇取得、柔軟な環境の醸成を
来年度からキッズウィークでUターンラッシュ見納め?

多くの乗客で賑わう東京駅

 帰省ラッシュやUターンラッシュによる交通渋滞や行楽地の混雑―。2018年夏は、こうした光景が一変しているかもしれない。政府は学校の夏休みなど長期休暇の分散化による新たな大型連休「キッズウィーク」を18年度から実施すると表明した。新たな旅行消費だけで4000億円もの創出効果が試算される一方、人手不足の中小企業などは経営への影響を懸念する。実現には慎重な制度設計が求められる。

 「学校側の努力だけでなく、企業においても有給休暇の取得が促進される必要がある」―。7月中旬に開催されたキッズウィーク推進の官民会議。安倍晋三首相は経済界の協力を要請した。キッズウィークは、小・中学校の長期休暇の一部を別の期間にずらすと同時に親が柔軟に有給休暇を取得できるようにする試み。夏休みなどに集中する観光需要が分散化すれば地域活性化にもつながるとみる。政府は地域ごとに協議会を設置し、具体的な検討を急ぐ。みずほ総合研究所によると、新規の旅行消費だけで4000億円の創出効果があるという。この規模は「16年の名目民間最終消費支出の0・1%程度に相当し、小さくない」と指摘する。

 年次有給休暇の取得率が50%を割り込む日本にとって「働き方改革」同様に「休み方改革」は重要だ。問題は、政府主導で一律に進める方策が適切かどうかだ。日本商工会議所の三村明夫会頭はキッズウィークの趣旨には一定の理解を示しながらも政府には「自主的かつ段階的に導入するといった柔軟な進め方」を求める。

 重要なのは、取得しづらい休暇を増やし政府の音頭で一律に適用させることではなく、個人の都合や事情に合わせて休暇を容易に取れる社会風土や職場環境を醸成すること。そのためには企業側も知恵を絞る必要がある。
(文=神崎明子)
日刊工業新聞2017年8月16日
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
働く親にとって仕事をうまく調整し夏休み中の子どもといかに有意義に過ごすかは毎年、頭を悩ませるところ。自由研究もまだ終わっていない息子を前に、来年はどうなるのか、今から心配です。

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