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資金と人材集まれ!京大が「指定国立大」の強み生かし新会社

研究成果の事業化を推進。持ち株会社が統括、全学的な取り組みに
資金と人材集まれ!京大が「指定国立大」の強み生かし新会社

京大公式ホームページより

 京都大学は研究成果の事業化推進に向け、新会社を設立する。産学連携のコンサルティング会社を新設した上で、既存子会社のベンチャーキャピタル(VC)と技術移転機関(TLO)を含めた3社を統括する持ち株会社を設置する。世界トップレベルを目指す大学として文部科学省が指定した「指定国立大」でのみ可能な規制緩和を生かす。全大学の共通課題である外部資金導入増の新方策で、先鞭(せんべん)を付ける。

 京大は6月に文科省の「指定国立大学法人」制度で東京大学、東北大学とともに指定を受けた。国立大の出資は一般にVCとTLOに限定される。

 一方、指定を受けると「研究成果活用の企業への出資」が可能になる。指定国立大学法人化に向けた計画で、京大だけがこの制度を生かした提案をしていた。社名は「京大オリジナル」を検討する。

 新会社は学内で手がけてきた技術相談業務を切り出して設立する。コンサルティングとシンクタンクの機能を持ち、文系学部の教員も参加する。外部からの各種相談から共同研究につなげ、企業からの資金調達を増やす重要な窓口と位置付ける。

 吉田キャンパス(京都市左京区)にある産官学連携本部と、同じ建物に入る全額出資子会社のVC「京都大学イノベーションキャピタル」、出資比率68%のTLO「関西ティー・エル・オー」と、新会社が連携して活動する。これらを持ち株会社が統括し、全学的な取り組みとする。

 京大は7月に東京・丸の内に産学連携活動の拠点を開設した。在京の大企業や大使館との接触を高め、連携先を開拓している。技術相談は各大学の産学連携部局が手がけるが、収入は小規模にとどまる。

 担当者は任期付き雇用のため、企画や営業にたけた人材を集め、ノウハウを蓄積するのが難しいのが収入増のハードルとなっている。産学連携業務の会社を設立すれば、産業界から大型資金を引き出せる人材を高給で任期なしに採用できる。このため民間資金獲得が進むと期待しているという。
日刊工業新聞2017年8月14日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 指定国立大は助成金もたいしたことはなく、「指定を受けるメリットがはっきりしない」といわれていた。その中でもっとも明確なもの、法改正をして初めて可能になる魅力というのが「研究成果を活用する企業への出資」だった。京大以外の二つ、東大と東北大からはこの切り口での計画は出なかった。が、例えば東大は「東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」という企業役員候補ら向けに、半年週2回で570万円という受講料の研修を動かしている。会社化の検討を進めているのでは、と想像される。  指定国立大の申請7大学のうち、今回は指定されなかった4大学は、計画ねり直しのチャンスが与えられている。阪大、名古屋大、東京工業大に加え、コンサルティングやシンクタンクでの活動となれば文系の一橋大学も気になるところ。ここから会社設立プランが出てくるか注目される。

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