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理工科目の成績、大学の枠超えDB化。素養を生かした就活が可能に

大学成績センター、企業の採用活動後押し
 大学成績センター(東京都千代田区、辻太一朗社長)は、全国各大学で開講中の理工系基礎科目について、名称に左右されずに約50にグループ分けしたデータベース(DB)を作成する。大手企業は就職活動中の学生の学部・学科や受講科目名に振り回されず、自社ニーズに適した素養のある学生を選べる。人材不足感が強い電機・機械や、ビッグデータ(大量データ)活用の採用で効果を発揮しそうだ。
 

 大学成績センターは、就活生に学んだ科目などの「履修履歴」をDBに登録してもらい、企業がこれを面接で活用する活動を推進している。「優良可」と「SABCD」といった成績表示の違いや“評価の甘辛”が調整され、横断的に比較できる。

 化学や建設など大手約210社が導入しており、2018年卒の就活生の4分の1超、約11万人が登録している。

 近年は、製造現場で恒常的に求められる電機・機械工学や、各業種で新ビジネスを生み出すビッグデータ活用のIT関連で、人材の不足感が強い。そのため、「ネットワークとプログラミングの科目を履修した」「材料設計と流体力学を学んだ」「環境系だが、化学系ではなく土木系」といった条件で対象者を探すことが増えている。しかし科目名や内容が大学で異なり、判別できないことが課題だった。

 今回、理工系基礎科目を50に集約するグループ分けとそのためのキーワードを設定。理工系大学の科目内容「シラバス」をキーワードで調べ、ほぼすべての科目をグループに当てはめたDBを10月に完成させる。

 これら新旧二つのDB活用で、企業は重視する分野を学んだ学生を特定できる。「構造力学を学んだ機械系学生が難しければ、材料工学か、少なくとも微積分を学んだ学生を採用する」といった柔軟な選択を後押しする。

日刊工業新聞2017年8月3日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「企業は採用において、新データベース(DB)を使うことで、求める学びをした学生を選ぶことができる」という切り口の記事だが、別の切り口で読むことも可能だ。つまり、「学生は就活において、新DBを使うことで、どのような学びをしてきたかを企業の採用担当者にアピールできる」ということだ。 大学のブランド力が弱かったり、学部・学科名が個性的でわかりにくかったりしても、学習活動を通じた潜在力を伝えることが可能となる。 また、在学中に情報・データ科学をはじめ、学生の関心が広がったり、変わったりした場合の学びについても、理解が進むはずだ。 ある意味、就職活動を本来の姿に近づける新ツールといえそうだ。

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