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環境にやさしい?ほとんどが木質材料の半導体チップ開発

セルロース・ナノファイバー活用、透明・フレキシブルに
環境にやさしい?ほとんどが木質材料の半導体チップ開発

透明なCNFを使った半導体チップ(Photo: Yei Hwan Jung, Wisconsin Nano Engineering Device Laboratory)

 原材料に木質材料を99%以上使った半導体チップが開発された。取り組んだのは米ウィスコンシン大学マディソン校と米農務省森林製品研究所のチーム。チップ上の電子回路はこれまでと同じだが、それを支える基盤(サブストレート)の部分を半導体材料から、木を原料にしたきわめて微細なセルロース・ナノファイバー(CNF)に置き換えることに成功した。

 CNFは化石燃料由来の材料ではないうえ、できた半導体チップは従来の3000-5000分の1しか半導体材料を使わない。さらに生分解性のため、電子機器廃棄物の減少につなげられるなど、環境にやさしい電子材料となる可能性があるという。一方で、透明性が高く柔軟なことから、フレキシブルなエレクトロニクス製品などの開発にも役立てられるとみている。

 CNFは電子材料に適した強度や熱伝導度、電気特性を持つものの、空気中の水分を吸収すると膨張することが課題となっていた。研究チームではエポキシ樹脂を表面にコーティングし耐水性を持たせることでこの問題を解決した。そのうえで、スマートフォンの高速通信用半導体に使われるガリウムヒ素(GaAs)のマイクロ波チップなどを作製。CNFを基盤材料に使い、5x6mmのエリアに1500個のGaAsトランジスタを作り込む手法も開発した。このCNF基盤のマイクロ波通信チップは現行の半導体チップと同等の性能を示したという。

 とりわけGaAsチップは有毒なヒ素を含むうえ、電子廃棄物から取り出すのに化学処理が必要で高いコストがかかっていた。生分解性チップであればGaAsの部分が取り出しやすくなり、コストが低減できるという。

 実際、CNF薄膜に対する生分解性テストで2種類の分解菌に晒したところ、エポキシを塗らないものは28日でそれぞれ19%、35%重量が減り、エポキシ樹脂をコーティングしたものは10%、6%減少した。成果はネイチャーコミュニケーションズに掲載された。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
生分解性が特徴の一つとはいえ、あまり早く半導体部品の分解が進んでしまうと製品が長持ちしなかったり故障したりしないのだろうか。製品化にあたっては、その辺の見極めが難しいような気もする。

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