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化粧する男性たち。有望市場へ身だしなみやおしゃれ提案

まだ全体の5%。「ジェンダーレス」の浸透も背景に
化粧する男性たち。有望市場へ身だしなみやおしゃれ提案

銀座シックスに出店した「SHISEIDO」。男性用化粧品もそろえた

 男性をターゲットにしたさまざまな化粧品が投入されている。ビジネスマナーとして「清潔感」が意識されていることや、男女の性差をなくす「ジェンダーレス」の浸透が背景にあるようだ。女性向け化粧品市場が飽和状態にあるなか、メーカーにとっても男性向け化粧品は売り上げ拡大が見込める有望市場。男性需要を取り込もうと、各社が積極的に顧客獲得に乗り出している。

 男性用化粧品市場を構成する主な製品はスタイリング剤、シャンプー・リンス、メンズスカルプケア。富士経済(東京都中央区、清口正夫社長)の調査によると2015年の男性用化粧品市場はシャンプー・リンス、ボディーケアで男性の加齢臭ケアを訴求したブランドが好調。

 シェービングが若年層のスキンケア意識の高まりや高年層の使用率向上で伸長した。16年以降もフェイスケアや男性の不快臭ケアを訴求したアイテムなどが市場をけん引するとし、15年比1・5%増の1116億円を見込む。
              

 堅調な成長が続く男性用化粧品で、縮小傾向にあるのがスタイリング剤。マンダムによると16年のスタイリング剤市場は10年前に比べて31・1%縮小。

 同社は「ナチュラル嗜好(しこう)の髪形が好まれるようになったため」と分析。従来のワックスやジェルで固めた髪形から、決めすぎない自然な髪形へと、主要顧客の若年男性の意識に変化が起きているという。

 一方で、男性のスキンケアや体臭ケア意識は高まっており、同社も「ギャツビー」シリーズからフェイシャルペーパーやデオドラントスプレーなどを積極的に投入している。

銀座に発信地


 20日に東京・銀座にオープンした「GINZA SIX(銀座シックス、東京都中央区)」。モノだけを売る従来型の商業施設とは異なり、体験や文化の発信地として、銀座の街を大きく変えると期待されている大型商業施設だ。地下1階の化粧品フロアには高級化粧品ブランドの旗艦店などがひしめく。

 大手化粧品メーカーの資生堂は銀座シックスの直営店「SHISEIDO」で男性向けサービスを充実した。女性用化粧品と併設して、男性用化粧品「SHISEIDO MEN(資生堂メン)」の専用コーナーを設置。

 化粧品カウンターでは美容部員が男性の肌を測定器でカウンセリングをしたり、スキンケアやクリームなどのスキンケア方法や眉の手入れのアドバイスをしたりする。

 資生堂のプレステージブランド事業本部マーケティング部SHISEIDOグループの伊東あかねアシスタントブランドマネージャーは「男性のおしゃれ意識が高まっているが、化粧品フロアや店舗のお客さまは女性がメイン。男性から『行きづらい』という声が上がっていた」と話す。

 そこで「私達(メーカー)から積極的に男性向けサービスを展開する」(伊東アシスタントブランドマネージャー)戦略。男性も買いやすい売り場づくりを目指す。6月に「おしゃれ男子の身だしなみセミナー」も開催予定だ。

3割が男性客


銀座シックス「GINZA PEEK−A−BOO AVEDA GINZA SIX」

 同じく銀座シックスの化粧品フロアに出店する美容室「GINZA PEEK―A―BOO AVEDA GINZA SIX」も男性顧客の来店を見込む。都内中心の9店舗の系列店では約3割が男性客。

 川島修身常務は「相手からどう見られているかや、清潔にみられたいといったニーズを持つビジネスパーソンが多い」。さらに「最近はカットだけでなく、ヘッドスパやトリートメントを注文する男性客がじわりと増えている」(川島常務)という。

 銀座シックスの新店舗は、美容室でヘアの施術が受けられるだけでなく、男性用化粧品のショップスペースも隣接。ヘアケアやスキンケア化粧品などトータルで提案する。

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日刊工業新聞2017年4月19日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
男性用化粧品市場は年々、規模を拡大しているものの、化粧品全体に占めるシェアは4・9%(2015年度、矢野経済研究所調べ)にとどまる。その分、女性に比べ潜在顧客も多いと見られ、成長が期待できそうだ。 (日刊工業新聞第二産業部・山下絵梨)

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