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6本足のロボットで1本が動かない!試行錯誤で失った機能を補うアルゴリズム開発

仏米の大学研究者らネイチャー誌に論文。損傷克服する自律ロボットに道
6本足のロボットで1本が動かない!試行錯誤で失った機能を補うアルゴリズム開発

実験に使った6本足ロボット(Antoine Cully/UPMC)

 動物が足にケガをすると、足を引きずりながらも、ちゃんと前に歩こうとする。これと同じように、6本足のロボットで1本の足が動かなくなると、試行錯誤で失った機能を補いながら、まっすぐ歩く機械学習のアルゴリズムが開発された。フランスのソルボンヌ大学、ピエール・マリー・キュリー大学(UPMC)、米ワイオミング大学の研究者らの成果。5月28日号の科学誌ネイチャーのトップ論文として掲載された。

 同じアルゴリズムを使い、平面空間をアームが水平移動するロボットでもダメージを補いながら、所定の目的を達成できることを実証。いずれの場合も、新しい動きを憶えるまでの時間は、おおむね2分以内だった。

 この機能を発展させれば、同じアルゴリズムでツルツルやデコボコといったさまざまな地表面にロボットが適応しながら前に進んだり、初めて遭遇した状況に対処するのに新しい行動を編み出したり、といった能力をロボットに持たせられる可能性があるという。将来は自律的な災害対応ロボットへの適用を見込んでいる。

 ロボットに採用した機械学習のアルゴリズムでは、まず行動・能力の相関を表したマップを作成。クモのような格好をした6本足のロボットに対し、1本の足を動かなくしたり、足の先端部を取り外したり、足そのものを失ったりといった5種類のダメージをロボットに与えた。すると、あらかじめ作成しておいた行動・能力マップと、実際の行動や状況を比較。その差から「まっすぐ歩く」という目的を達成するために、ロボットの残りの足の動きや着地している時間をどう変えればいいか、試行錯誤で解決策を見いだしていった。

 一方、アーム型ロボットでは、ボールを持たせ、平面空間をアームが滑るように動いていってボールをカゴに入れる作業が対象。ロボット自体は8つの関節でつながり、それらが協調しながらいっしょに動いてボールを持つ先端部が所定の位置で止まるようになっている。動かなくする関節の位置を変えたり14種類のダメージを試したところ、こちらも試行錯誤を重ねながら、ロボットがカゴの真上で止まり、ボールを入れる動作を学習した。

【YouTube映像はこちら↓】
https://www.youtube.com/watch?v=u_NJNyOGfEU
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
ロボットの研究成果がネイチャー誌のトップを飾るのは極めて珍しい。というのも、今回の成果が単体のロボット開発ものではなく、汎用性の高いアルゴリズムだったからだろう(あるいはDARPAロボティクスチャレンジの開催直前だから?)。このアルゴリズムを発展させれば、人間が行けないような災害現場や遠く離れた惑星探査などで、さまざまなダメージを克服しながらミッションを遂行する堅牢なロボットが実用化できるかもしれない。

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