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米国の半導体産業再興へ、ホワイトハウスに業界トップメンバーの部会設置

インテル、クアルコム、MS、アプライドなどの経営陣が結集
米国の半導体産業再興へ、ホワイトハウスに業界トップメンバーの部会設置

インテルが8月に正式発表したコードネームKabyLakeこと第7世代Coreプロセッサ(インテル提供)

 米オバマ政権が半導体産業の強化に向けて、ホワイトハウスの大統領科学技術諮問委員会(PCAST)に同産業界の経営トップを結集した半導体ワーキンググループ(WG)を設置した。メンバーは、インテル、クアルコム、マイクロソフト、グローバルファウンドリーズ、フリースケール(現在は蘭NXPセミコンダクターズに統合)、アプライドマテリアルズ、ノースロップ・グラマン、JPモルガン・チェース研究所などの現・旧経営陣らで構成されている。

 半導体分野では、それまで1年半から2年で半導体チップの集積度が2倍になると言われてきた「ムーアの法則」の達成が技術的な壁に直面しつつある。さらに開発・製造コストの上昇や国際競争が激しさを増す中、世界の半導体市場で米国のリーダーシップを持続させていくための戦略を議論する。

 ワーキングの共同議長には、PCAST共同委員長でもある米国科学技術政策局(OSTP)のジョン・ホルドレン局長と、ポール・オッテリーニ元インテルCEOが就任。学界からは、ミップス・コンピュータシステムズを設立し、今年8月までスタンフォード大学の第10代学長を務めたジョン・ヘネシー名誉学長と、カリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールの元院長で、ビル・クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長を務めたローラ・タイソン教授(マクロ経済学)が加わっている。

 米国における半導体産業の位置付けは極めて高い。インテルは世界最大の半導体メーカーであり、半導体産業全体で国内に25万人の直接雇用を生み出し、3番目の輸出産業にもなっている。売上高に対する研究開発投資の比率も全産業中1位。携帯電話から自動車、医療機器、探査衛星、軍事システムに至るまで幅広い分野で重要な役割を担い、米国の経済や科学技術だけでなく安全保障にも深くかかわっている。

 一方、最近ではパソコンからモバイルデバイスへの移行で、インテルやAMDの国際競争力が落ち、モバイルチップ設計・開発に特化した英ARMが市場を独占するなど、業界地図が塗り変わりつつある。

 さらに懸念されているのが、中国の動向だ。2014年には、中国政府が半導体の世界トップの座を目指し、研究開発や製造施設向けに1000億ドル(約10兆円)もの巨額の資金を投じると発表。大きな脅威として浮上しつつある。それとは別に外国企業に国内市場参入を認めるのと引き換えに技術や知的財産の移転を暗に要求するケースもあるという。

 ワーキンググループの共同委員長を務めるホルドレン局長はホワイトハウスの公式ブログで、「半導体産業が国内外で直面する中心的な課題を特定し、この分野で米国がリーダーシップを発揮し続けていくための機会を見極めていく」と抱負を述べている。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
日本がDRAMで世界を席巻していた時代には「半導体は産業のコメ」と言われていたが、最近はとんと聞かない。日本が半導体ですっかり後れをとっているためだろう。半導体の個別企業の再生支援に汲々としている日本に対し、半導体チップを生み出した「米国」にとって重要戦略物資であり、産業どころか国家のコメとも言える。願わくば、こうした部会が外国企業を不当に叩く差別政策を議論する場とならずに、ポスト・ムーアの法則をめぐる具体的な手立てにつながっていけばと思う。

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