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アップルのEV委託製造先にマグナ・シュタイア浮上!?

テスラから前副社長に続き自動車部品加工のCNCプログラマーを引き抜き
アップルのEV委託製造先にマグナ・シュタイア浮上!?

アップルのCarPlay(同社のウェブサイトから)

 「シリコンバレーでは公然の秘密」(テスラモーターズのイーロン・マスクCEO)ともいわれるアップルの電気自動車(EV)開発プロジェクトが、水面下で着々と進められているようだ。そのテスラからエンジニアリング担当の前副社長を迎え入れたことが今週明らかになったのに続いて、機械加工の上級プログラマーまで引っこ抜き、研究施設で自動車部品の試作に当たらせているという。アップルニュースサイトの9to5Macが報道した。

 一方で、アップルはオーストリアの自動車製造事業者マグナ・シュタイアとの提携に関心を持っているとドイツのフランクフルター・アルゲマイネが18日に報じた。EVの委託生産をめぐっては、ダイムラーやBMWとの提携交渉が暗礁に乗り上げたとされ、その後、アップル幹部がマグナ・シュタイアの親会社であるカナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルを訪問し、自動車プロジェクトについて協議を持ったという。マグナ・シュタイアはBMWのミニやX3などの受託生産も担当している。

 さらに、同紙によれば、アップルはベルリンに秘密の研究所を設立し、ドイツの自動車メーカーを対象にエンジニアのヘッドハントに乗り出しているという。これに先立って、2015年2月にはメルセデスの前R&D部門トップのヨハン・ユングヴィルト氏を迎え入れている。

 3月にテスラを退社し、4月にアップルに入社したのはデイヴィッド・マシューキーウィクツ氏(David Masiukiewicz)。アップル製品のプロトタイプを作る製品実現研究所(Product Realization Lab)の「シニアモデルメーカー」として雇用された。LinkedInのプロフィールによれば、同氏はテスラ時代に「シニアCNC(コンピューター数値制御)プログラマー R&D ハードウエアプロトタイピング」の肩書を持ち、EVのパワートレーン、サスペンションおよびシャシー部品の精密5軸CNC切削加工に携わっていたという。

 しかも、プロフィールには使用していたCAD/CAMソフトまで詳細に記述され、5軸加工用に3次元CADの「CATIA(キャティア)v5」(仏ダッソー・システムズ)と同時5軸CAMソフトの「hyperMill(ハイパーミル)」(独オープン・マインド・テクノロジーズ)を、さらにフライス(ミリング)/旋削加工のプログラミングにはミッドレンジCAMソフトの「ESPRIT(エスプリ)」(米DPテクノロジー)を使っていた。

 アップルの製品実現研究所は、製品デザインチームや機械加工技術者、エンジニアなどが協力して新製品のプロトタイプを作り上げる施設。これまではマッキントッシュやiPhone、iPadなどがおもな対象だったが、今後は自動車部品の試作も担当するとみられる。アップルはこれ以外にも、EV開発の「プロジェクトタイタン」向けに、クパティーノの本社に近いサニーベールに複数のビルを借りているとされる。

 さらに製品実現研究所には、同じく自動車分野でのCNC機械加工のノウハウを持つケヴィン・ハーヴェイ氏も昨年8月に入社している。同氏は以前、インディカー・レースやEVのフォーミュラEなどに参戦する米国のレーシングチーム「アンドレッティ・オートスポーツ」でCNC機械工場の管理者を務めていたという。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
マッキントッシュやiPhoneのアルミニウム筐体の削り出し加工でも工作機械を多数使っていますが、同時5軸まではさすがに不要でしょう。機構が複雑な自動車部品ならではのニーズで、この分野では日本発の技術もかなりお手伝いできるのではと思います。ただ、これまでの同社との取引実態を見る限り、あまり深入りしないほうが身のためかもしれません。

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