大型基金活用に道…国立大学の施設整備で出てきた変化
国立大学の施設整備で変化が出てきた。文部科学省の基盤的予算「施設整備費」は長年、各大学の老朽化対応にも十分に応えられずにいた。しかし国際卓越研究大学や地域中核・特色大学などの施策に合わせ、予算の自由度が高いトップダウン型の政府施策が相次ぎ登場。多額の資金を建物の増強に活用する道が出てきた。「ソフトとハードが一体となった教育研究環境の整備」という流れに向けて、関係者は積極的になっている。(編集委員・山本佳世子)
国立大学などの大規模施設を整える「国立大学法人等施設整備費補助金」は、運営費交付金と同様に基盤的なものだ。2022年度は当初予算363億円、補正予算582億円の計約1000億円が計上された。
「大学の現場では、教育研究の機能強化には施設の整備が重要だと強く認識されている」(文科省の文教施設企画・防災部)。しかし国立大施設は保有面積の3分の1が築25年以上。安全面から老朽化対策が優先されており、それさえ不十分だ。研究教育の予算が増えても施設整備には使えず、新増設は学部新設などの際に限られていた。
ところが大学の機能の抜本的強化に向けて、大型基金が相次いで設けられたことにより様子が変わってきた。
3月末が応募締め切りの国際卓越研究大学制度では、研究インフラの戦略的整備・更新・維持、大学発スタートアップの創出拠点や大型産学協創拠点の形成に向けた施設整備に資金を使える。
地域中核・特色ある研究大学の振興に向けた施策はさらに明確だ。22年度補正予算で付いた2000億円のうち、約500億円は産学官連携・共同研究の施設整備向けだ。「25件、平均20億円」が採択される公募に、多くの大学が色めき立っている。
教育では、理工系のデジタル、グリーン分野強化を目的に約3000億円の基金が注目を集める。中心は私立・公立大学の再編後押しだが、情報系については国立大にも10億円、優れた案件には20億円の支援がある。
この理工系強化は政府の教育未来創造会議が、22年初夏に打ち出した第1次提言に端を発する。
次のテーマは国際化だ。留学生や外国人研究者を引きつける重要性が、第2次提言で出てくる見込みだ。国際的に恥ずかしくないハード整備に向けて、期待は膨らみそうだ。