ニュースイッチ

技術を追求する工業炉専門メーカー ―ロングセラーを生んだ多彩な熱処理技術

理系・語学系×企業ジョブマッチング/中日本炉工業株式会社
記者の目/ここに注目
□前向きな失敗は歓迎、技術開発にチャレンジ精神を発揮
□新人研修は6カ月、資格取得は会社負担

高品質を実現する次世代炉を開発

中日本炉工業は、鋼材に熱を加えて加工する工業炉をフルオーダーメードで製造しており、顧客の要望に多彩な技術で対応している。1974年に開発した加圧冷却方式の真空炉は発売以来、国内外で高い評価を獲得。「NVFシリーズ」として小型から大型までをラインアップし、焼き入れ、焼き戻し処理や真空ろう付けなど幅広い熱処理用途でロングセラーを続けている。受注する工業炉のすべてが特注品といえるだけに、後藤峰男社長は「常に挑戦する気持ちで技術の開発に努力してきた」と自負する。こうした姿勢が「前向きな失敗は歓迎」というチャレンジ精神を育み、会社全体に浸透している。本社には熱処理工場を持ち、自社製炉を使って熱処理の受託加工を行っており、自ら実践し、蓄積した加工技術、ノウハウを工業炉製造にフィードバックしている。

代表取締役
後藤 峰男さん

次世代自動車やロボットの普及など技術革新に伴い、材料や製品を加工、処理する工業炉に対するニーズは多様化、高度化している。従来以上に高品質な熱処理の実現を目指した技術開発から生まれたのが、次世代工業炉といえるアクティブスクリーンプラズマ(ASP)窒化装置だ。

プラズマを用いた窒化処理は、焼き入れに比べて比較的低温(約500℃)で処理し、材料の熱変形が少ないといった特徴を持つ。ASP窒化装置ではスクリーンを介してプラズマを発生させる方式とし、窒化性能の制御性に優れ、プラズマを用いた窒化処理で課題とされていた材料の表面荒れ、窒化ムラを抑えることができる。高品質な熱処理技術として、名古屋市と名古屋産業振興公社が制定する「工業技術グランプリ」で2020年度に同公社理事長賞を受賞するなど評価を得ている。さらに、将来のカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成への貢献でも期待されている。

社員が意見を出し合い改善提案

顧客の要望に柔軟に応えながら作り込む工業炉は、従来にない構造だったり、時に世界初の試みだったりと創造性に富むモノづくりといえる。後藤社長は「こうした製品づくりを支えているのは従業員一人ひとりの力だ」という。各自が職場で十分に能力を発揮できるための支援を惜しまず、特に、新人研修には約6カ月以上をかけており、2カ月の外部機関研修など、さまざまな経験を積みながら成長を促している。仕事に役立つ資格取得も奨励しており、費用は全額会社負担だ。また、社員同士で仕事のやり方や設備の操作方法などを学び合う勉強会「5分間道場」は、当初の製造現場から設計部門へと広がり、仕事を学ぶ場であると同時に、上司部下・先輩後輩のコミュニケーションの場ともなっている。

顧客の要望に柔軟に対応して作り込む
職場づくりに社員の意見を取り入れている

各職場では社員からの改善提案が活発で、ベテラン、若手を問わず、気軽に意見を出し合い、改善に取り組んでいる。これまでに工場で空調設備を整えたほか、設計部門では5年前から社員の意見を取り入れて自動昇降デスクを導入し、快適な職場環境づくりに全社一体で取り組んでいる。健康経営の実践を通じて生産性向上を図るにあたり、後藤社長は「社員にはもっと声を出してほしい」と新しい視点で会社の風土を変えていく考えだ。

現在はデジタル変革(DX)を推進し、全社的な業務の効率化を加速している。熟練工のノウハウをデータベース化した熱処理レシピ生成システム「DiMA」では「令和2年度情報化促進貢献個人等表彰 経済産業大臣賞」を受賞するなど、得意のITでモノづくりの進化に挑んでいる。また、効率化による長時間労働削減への取り組みが認められ愛知労働局からベストプラクティス企業に選ばれている。モノづくりと同様、人材育成や業務改善にもチャレンジ精神を発揮している。

理系出身の若手社員に聞く
熱流体解析で設計の課題に立ち向かう

生産本部設計技術部
宮野 修輔さん
(2018年度入社)

設計部門で熱流体解析を担当しています。数値解析シミュレーションソフトを使って不具合の原因を探ったり、工業炉の新規製作や改造に関わる検証をしたり、さまざまな課題に取り組んでいます。

若手でもプロジェクトを提案できるなどチャレンジしやすい環境は魅力の一つです。例として、社内で3次元(3D)プリンター導入の話があった際、解析実験用の模型作成にも活用したいと思い、皆と一緒に提案し、認めてもらいました。資格取得支援や社内勉強会など学ぶ機会も多く、さらにレベルアップに励んでいきたいです。

会社DATA
所在地 愛知県あま市木折八畝割8
設立 1965年1月
代表者 代表取締役 後藤 峰男
資本金 2000万円
従業員数 114名
事業内容 真空炉、電気炉、焼成炉および付帯機械設備、燃焼設備、制御装置の設計、製作、施工、金属熱処理およびCVDコーティングの受託加工
URL https://nakanihon-ro.co.jp/

特集・連載情報

スキルを活かす!理系・語学系×企業 ジョブマッチング
スキルを活かす!理系・語学系×企業 ジョブマッチング
2024年卒の理工系および外国語系学生必見!上場企業から中堅・中小企業まで独自の技術や製品・サービスを持つ優良企業を、日刊工業新聞記者が各企業の特長や将来性、業界での優位性、働き甲斐などについて第三者の視点で紹介します。

編集部のおすすめ