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東大IPCが“第二創業”へ、政府資金頼らぬ「独自ファンド」検討

東大IPCが“第二創業”へ、政府資金頼らぬ「独自ファンド」検討

東大IPCが入る東大本郷キャンパス(東京都文京区)の南研究棟アントレプレナーラボ

東京大学子会社の東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC、東京都文京区、植田浩輔社長)は、政府出資金による2ファンドに次ぐ独自の新ファンドの検討を始めた。東大は600億円規模のスタートアップ(SU)ファンド計画を公表しており、その担い手として民間の出資金獲得などに取り組む見込みだ。伸長する大学発SUの人材育成事業と合わせ、新たな枠組みで2024年度をめどに固める。

東大は21年、10年以内に600億円規模のSUファンドを設立する方針を明らかにした。自ら100億円規模の出資(現物出資含む)をするほか、金融機関や事業会社からの出資を獲得する。

政府が10兆円規模の大学ファンドで24年度から支援する「国際卓越研究大学」では、SU支援についても重視されている。東大が国際卓越研究大学に認定されることになった場合は、ファンドの早期の具体化を目指す方針だ。

東大IPCは16年の設立。政府の出資によって東北大学京都大学大阪大学も各子会社でファンドを運用している。東大には他3大学と異なり、関連の民間ベンチャーキャピタル(VC)が複数ある。

東大IPCが組成した1件目の「協創1号ファンド」は民間VC支援を目的としており、複数のファンドに出資するファンド・オブ・ファンズ(FoF)や協調投資が柱だ。2件目の「AOI(アオイ)1号ファンド」は企業のイノベーションを支援する産学連携SU向けで、26社への投資を実行した。2、3年内に投資を完了する見込みだ。今後設立するファンドは政府資金に頼らず、東大グループの自力によるものとなる。

東大IPCは、大学発SUを起業前から支援する活動を拡大している。現在、8大学の案件を20社のスポンサー企業や複数のVCが審査して支援している。今後、投資との連動がさらに進むと期待される。

日刊工業新聞 2023年02月02日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
東大IPCの創設も2つのファンド組成も、政府の補正予算によっていただけに、ミッションはこれらを成功に導くこと、だ。つまりその後は白紙であり、場合によっては(ファンドや会社の運営がうまくいっていない場合など)「解散」という選択肢もある。しかしそうではなく独自ファンドへ動くのだから、これは同社にとっては「第二創業」といえるターニングポイントとなる。発足当時、「民間VCは苦労をしてファンド組成の資金を集めているのに」という批判が寄せられていたが、いよいよ自らの力でそこへ飛び込むことを、4大学VCの中でいち早く宣言した形だ。

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