ニュースイッチ

文科省「共創の場形成支援プログラム」、今年度の注目大学は?

文部科学省事業の「共創の場形成支援プログラム」(COI―NEXT)の2022年度採択が例年以上に注目されている。政府の「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」で同事業が土台の一つとなったためだ。1次産業のイノベーションに正面から取り組むケースも目立つ。前身の事業と同様、10年と支援が長期になるだけに、社会とともに“脱皮”する様もポイントとなっている。

22年度の採択数は、COI事業が21年度に完全終了したことで増えた。にも関わらず今回の競争率は枠によっては6倍にもなった。支援対象の総合振興パッケージの人気から、公私立大学の新顔採択も目に付く。

例えば宇宙の居住環境の知見を地上に展開する東京理科大学、自然界と人類をまとめて「ワンワールド・ワンヘルス」とする沖縄科学技術大学院大学などだ。横浜市立大学はウェルビーイング(心身の幸福)を掲げ、生きづらい若者の心にデジタル技術で迫る。

1次産業関連では、長岡技術科学大学が新潟県の稲作の自然循環に、秋田県立大学が森林資源の次世代の活用に取り組む。岡山大学は果樹農業の課題解決を、琉球大学は沖縄の食とエネルギーの循環を、それぞれ目指す。

一方で東北大学、川崎市産業振興財団、名古屋大学など前身事業で高評価ながら、「ビジョンに新鮮味がないなどで昨年度に採択されず、ショックを受けていた大学」(文科省の産業連携・地域支援課)の変容も注目だ。ヘルスケアの弘前大学は対象を高齢者から働く世代へシフト。新たにゲームのDeNA、化粧品の資生堂などと組み、進化を図っている。

本格化する文科省の「共創の場形成支援」。産学官拠点の自立なるか

日刊工業新聞 2022年12月01日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
今回の採択では直後に、記者会見の案内や、「ぜひ取り上げてください」メールがいくつも寄せられた。すでに数年目のCOI-NEXTであり、それまではなかったことから、「今年度はいったいナゼ?」と思った。改めて思ったのは、採択大学の多様化だ。前身のCOIは国立の研究大学に限定されていただけに、様々な大学が「我々だって!」と胸を張っているのだろう。補正予算の地域中核・特色ある研究大学向けの基金2000億円も大きな後押し、盛り上がった関係者らの健闘を期待している。

編集部のおすすめ