データサイエンスの学びに真打ち、一橋大学の強みと弱み
一橋大学は2023年度開設のソーシャル・データサイエンス学部で、社会科学とデータサイエンス(DS)をほぼ同等に学ぶカリキュラムを構築した。経営・経済学系だけでなく法・政治学系にも目配りをした科目配置は珍しい。演習に日銀や世界銀行、兼松、トヨタ自動車、Sansanなど約20機関が協力の予定。約3件の共同研究や、企業向けリカレント(学び直し)教育も検討中だ。

一橋大学の新学部生は1年次から社会科学と、統計、情報、プログラミングのデータサイエンス(DS)を学ぶ。選挙結果分析など「政治学とDS」、自然言語処理を使った紛争解決の記録文書のテキストマイニングなど「国際政治とDS」といった科目もある。「ソーシャルDSの法と倫理」は必修で、他大学DS学部にはない学びが目に付く。
社会科学とDSを融合する3年次の課題解決型学習(PBL)は、25年度開講でデータ提供元の専門家も指導に入る。日銀の金利や為替レート、内閣府の景気動向指数などで政策効果を検証。兼松とは事故防止の車両走行データ分析、Sansanとは人的ネットワーク分析を手がける計画だ。
同大は政府機関とのつながりが強い。教員が非常勤アドバイザーを務めていたり、財務省官僚が博士課程に在籍していたり、日銀に卒業生が多かったりする。近年は政策形成におけるデータ活用(EBPM)への期待も大きい。
同大は法、経済、商、社会学部からなる社会科学系総合大学。10の指定国立大学の一つでトップクラスの研究大学だ。計量経済学や統計学、文字情報を数値化するテキストマイニングなど、高度なDSを研究手法として活用してきた背景がある。新学部では、自然言語処理に人工知能(AI)の機械学習を組み合わすといった広がりが期待される。
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日刊工業新聞 2022年11月03日
