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「教育系大学ー」で終わらない、東京学芸大のユニークさ

「教育系大学ー」で終わらない、東京学芸大のユニークさ

学芸大キャンパスにおける連携の場の完成予想図

東京学芸大Explayground(エクスプレイグラウンド)推進機構(東京都小金井市、国分充・孫泰蔵代表理事)は、多様な“産学官民子ども連携”の学びの活動をネットワーク化する。共創の場となる施設が来春、同大キャンパス内に完成。ここでワーケーションや間伐材利用など40超のラボの相乗効果を引き出す。さらに科学や技術、工学、芸術・教養、数学を統合的に学習するSTEAM教育の全国ネットワーク化も視野に入れていく。

エクスプレイグラウンドは東京学芸大学教育インキュベーションセンターと、起業支援のMistletoe(ミスルトゥ)による社団法人で取り組む、公教育でのイノベーション創出活動。2018年の協定から始まった。このうち大人・子どもを区切らず、参加者の関心に基づく学びと社会実装を目指すラボ(プロジェクト)活動が、40超まで増えてきた。

例えば「ワーケーションラボ」は日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)の企画で、岩手県山田町の小学6年生と、首都圏の社会人の各十数人が参加。震災復興や観光、環境をテーマに、総合的学習とワーケーションを合わせた“越境学習”をする。

環境学習と間伐材の伐採、ベンチなどの製作活動は、同大付属の中学生三十数人が中心だ。NPO法人緑のダム北相模、住友林業、高校生や同大内外の大学生が参加する。

ここで使う最新鋭の木材加工機などを、建設中の建物に置く。試作などで各ラボが相互につながり、刺激を得て創造的な人材の育成が進むと期待する。またSTEAM教育の主体的な学びが全国で盛り上がっていることから、他地域との連携企画も進めている。

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日刊工業新聞 2022年10月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
少し前に「学芸大、やるなあ」と思ったのは、キャンパス内に辻調理師専門学校の教育研究拠点を誘致したことだ。東京にあるという立地と、食育や生活科学の教育系大学の特色を生かしているからだ。この特色は、エクスプレイグラウンドでも同様に生かされている。一つ一つの活動は他大学でも、課外活動や地域インターンシップで似たものがある。ただ有志の教員や学生が手がける形で、全学的なものでないことが多い。一方、今回の機構(社団法人)の代表理事は、同大学長と、資金力豊富な孫泰蔵氏が務めている全学的な取り組みだ。さらにSTEAM教育の観点から、全国ネットワーク化できないか、と広げる点は同大ならではだ。STEAM教育は政府の重視を受けて、大学の教育系でも理工系でも盛り上がっているだけに、注目が集まるのではないか。

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