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「事業成長3%」はハードルにならず!?大学10兆円ファンド設計の行方

文部科学省科学技術・学術審議会の大学研究力強化委員会で、大学10兆円ファンドの支援対象「国際卓越研究大学」の詳細設計が進んでいる。「支援額は外部資金獲得額に一定の係数をかけて算出」「大学独自基金の目標と計画を提出」など、委員会で事務局の提示に基づいて議論がなされた。一方で注目されていた「事業成長3%」は、実質的なハードルにならない様子となっている。

支援額は「公的資金以外の外部資金獲得額(基準は過去5年間の平均)に、一定の係数をかけた金額」を前提とする案が出された。産学連携収入や寄付など財源の多様化を評価するためだ。しかし委員会では「公的研究費の獲得を含めるべきだ」と、複数の意見が出た。

また支援“卒業”後に向けた「ストック」となる、対象大学の独自基金の目標額・造成計画を重視することを強調。対象大学から大学ファンドへの拠出額と合わせ、別途検討が必要としている。

一方、研究力強化の「フロー」の数値として注目されていた「3%事業成長」は、収入時点ではなく支出時点でみることが示された。数値より計画の中身により重点が置かれることになりそうだ。

日刊工業新聞 2022年7月21日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
注目されていた3%成長が、「収入」でなく「支出」で見るよう変わってきたことに驚いている。モラルのない形で動くなら「学費値上げでも大学債でも、なんでもいいから収入を増やし、合わせてじゃんじゃん使えばいい」ということになるか。さすがに国際卓越研究大学たるもの、そうはならないだろう。正当な形としては「企業資金や寄付で外部資金を獲得して(大学ファンドからの配分と合わせて)、研究力強化に向けた研究者雇用や施設・設備整備をがんがん進め、支出は膨らんでいく」という形だろう。ちなみに「3%成長を(支援一区切りの候補として出ている25年間など)続けると、組織の予算規模は倍になる。それを目指せということか?」という確認が、委員会の委員から出ていた。そういう意味であれば、昨年来からそう思われていた「3%の収入増を近々、実現できそうな大学が、認定の候補」という話は、まったく違ってくる。それよりも、「外部資金獲得や独自基金造成のきちんとした計画が、重要だ」と強調されている状況だ。

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