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お茶の水女子大が本格化、「ジェンダード・イノベーション」は研究テーマの宝の山!?

お茶の水女子大学のジェンダード・イノベーション研究所が本格的に動き出した。「ジェンダーバイアス発見のデータサイエンスと情報可視化」「異性介護に伴う課題と調査」「血栓症発症の性差要因に関する糖鎖科学」など八つの学内研究プロジェクトを選んだ。今後は研究大学や産業界との共同研究にも広げ、ジェンダード・イノベーション(GI)の全国ハブになる方針だ。

GIは社会的・生物学的性差に注目し、新たな価値を生み出す活動だ。欧米先進国と異なって、日本ではまだ動き出したばかりだ。4月設立の同研究所は学内公募でほかに「教育施設のオールジェンダー対応型トイレ導入の研究」「高齢者のキッチン環境改善のGI」「緑内障予防・治療の行動変容に向けた心理学的エビデンスとイネーブラー技術」「脳内情報処理機構の性差・個体差を踏まえた情報提供手法」「調理動作データベースとジェンダー分析」を選んだ。

産学連携などで外部資金獲得増を目指す内閣府事業の予算を活用しており、産学共同研究や人材育成への発展が期待される。

また設立記念シンポジウムでは東京大学、横浜国立大学、東北大学、九州大学、立命館大学などの学長・理事らがメッセージを披露。国立女子大学の特色を生かしたGIにより、これら総合大学との連携も進むことになりそうだ。

関連記事:性差視点で研究開発、注目集まる「ジェンダード・イノベーション」の有望分野

日刊工業新聞2022年6月23日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
ジェンダード・イノベーション(GI)の事例は、米国・スタンフォード大学のHPにかなりのものが掲載されている。もっとも日本で、まとまった形で研究を始めるのはお茶の水女子大学が初めてだ。高齢化社会において「異性介護」は気になるテーマだし、緑内障で挙げられている患者の行動変化を促す治療などは「確かに男女でやりようが違ってくるだろう」と想像する。血栓症での性差では 「糖鎖」がポイントになるのか!? というのも意外だ。掘り起こすとどんな研究テーマが出てくるのか、GIは宝の山と期待できそうだ。

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