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世界初!米フォードが雪道で自動運転車の走行実験

事前作成の高精度3D地図もとに、見えない車線や道路標示を認識
世界初!米フォードが雪道で自動運転車の走行実験

雪道を走るフォードの自動運転車(同社提供)

 米フォード・モーターが雪道を含む冬の環境下で自動運転車の走行実験を開始した。ミシガン大学のエンジニアと協力しながら進めるもので、完全自動運転車の雪道走行は自動車メーカーとして世界初の試みという。

 高解像度の3Dマッピング技術と、200m先の物体まで高精度に捉えられるレーザーレーダーのLiDAR(ライダー)を組み合わせ、積雪が邪魔して車載カメラやセンサーで車線や路面標示が読み取れない場合でも、その指示通りスムーズに走行できる完全自動運転車を目指すとしている。

 実験場所には、ミシガン大のキャンパス内に昨年オープンした自動運転車用の大規模実験施設「Mシティ」などを利用。この施設は広さ13ヘクタール(32エーカー)もの敷地に、建物や道路、標識を含め、実際の市街地がそのまま真似て作られている。

 実験では、あらかじめ雪が積もっていない場所を自動運転仕様の「フュージョン・ハイブリッド」で走行し、車載のLiDARで周囲の街並みをスキャンしながらセンチメートル単位で3Dマップを作成。道路標識や車線、路面標示、建物、樹木、地形などを自動認識し、地図上にそのデータを埋め込んでおく。こうすることで、路面が見えない雪道でもコンピューターが周囲の状況を把握し、車線や路面標示に従った自動運転が行えるという。

 さらに、雪道など滑りやすい道路で安全に運転するための横滑り防止装置(ESC)や、エンジン出力を調整するトラクションコントロールシステムも、自動運転ソフトと連動して働くようにしてある。

 自動運転車の走行実験はこれまで、雨が降らず、路面が乾いた理想的な環境で実施される事例がほとんど。フォードでは米国の住民のおよそ7割が降雪地域に住んでいることから、完全自動運転車の開発には実際の天候に合わせた走行実験が不可欠と判断した。

 フォードは約10年前から自動運転車の開発に取り組み、しかも完全自動運転車の実用化に狙いを置く。今月からは、同社として第3世代の自動運転実験車を、カリフォルニア、アリゾナ、ミシガン各州の道路や施設で計30台の規模で走行させる実験に入っている。
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
先日ラスベガスで開催された家電見本市の「CES 2016」では、自動運転車をめぐってフォードとグーグルの提携発表があるのでは、と事前に噂されていたが、フタを開けてみたらアナウンスは全くなし。拍子抜けした格好だが、それでも裏では着々と両社の交渉が進んでいるのかもしれない。セミ自動運転ではなく、完全自動運転車という最終形でもフォード、グーグルの狙いは一致する。実際、フォードのマーク・フィールズCEOは、MITテクノロジーレビューとのインタビューで、グーグルとの一件についてはコメントを辞退しながら、多数の会社と提携に向けた話し合いを進めていることだけは認めたという。

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