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研究の専門性重視でスカウト…理系大学院生の理想の就活で存在感示すサービスの正体

研究活動に忙しい理系の大学院修士学生らにとって、理想の就職活動は、自らの研究の専門性を評価する研究開発型企業からのスカウトかもしれない。この手法で存在感を示すのがPOL(東京都千代田区、加茂倫明代表取締役最高経営責任者〈CEO〉)だ。同社の「LabBase」(ラボベース)は登録の学生が約4万5000人、利用の企業も500社の規模にまで育っている。

理系特化のスカウトサービスはこれまで4社が手がけ、そのうち3社が撤退しているという。要因の一つは、理系の大学院生は研究に忙しいことにある。新サービスに興味を持っても、詳細なプロフィル記述までに至らないケースが少なくなかった、と加茂CEOは振り返る。

そのため研究室を一つずつ回って浸透させ、企業側の評判は、このプロフィルの質の高さで獲得していった。魅力的なサービスと認識されるには、この地道さとスピーディーな規模拡大の両方が必要だったわけだ。これは学生1人と企業1社をマッチングする人材紹介型とは異なる部分だ。

途中から、著名な大企業が推薦による採用を撤廃するなど、就活における風向きも変わってきた。自動車会社では機械や電気系だけでなく、ITやコンピューター系の採用ニーズが高まった。昔から付き合いがある特定研究室だけを相手にしていては、ほしい人材は集まらない。

そのために「採用ニーズの分野横断化が起きた」と加茂CEOは強調する。全国の魅力ある学生をウェブで探し出せる仕組みは、企業に歓迎された。さらに今、加茂CEOが関心を持つのはジョブ型採用だ。理系の研究者採用には適するとみて、新たな仕掛けづくりを思案している。

日刊工業新聞 2022年5月19日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
理系修士学生は、「自分の研究テーマにぴったりの技術でなくてよいけれど、頑張ってきた研究活動と無関係の部署での仕事では寂しい」という気持ちを持っていることだろう。私自身も「修士レベルで専門性に強くこだわるのはマイナス」だが、「専門を生かしながら、幅広いテーマや事業で活躍するキャリアを、少しずつ育ててほしい」という思いがある。その意味で社会人最初の入口で、POLのようなスカウト型を採用する企業の人事なら、若手の早期退社を防ぎ、好ましい人材育成が可能になるのではないか、と期待している。

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