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文科省が指針、大学の研究機器の共同利用は浸透に濃淡あり

文部科学省は「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」をまとめた。大学本部は機器の管理を研究者個人任せにせず、経営戦略に基づく整備・運用計画を策定すべきだと強調。研究支援人材の技術職員やリサーチ・アドミニストレーター(URA)に加え、企業など学内外の利用料金設定に関わる財務担当部署などをつなぎ、全学的な統括部局やチームを編成することを求めている。

研究力強化の人材・資金・環境のうち、研究の設備・機器は環境面の重要施策だ。更新やメンテナンス、空調や管理者配置などでコストがかかるが、現状では財源が不十分だ。競争的資金で購入された機器は研究者任せで、中長期のフル活用が課題となっている。

ガイドライン(指針)では機器の共同利用のための継続的・効率的な運用を、大学の経営戦略に位置付けるべきだとした。研究支援人材の育成や、利用料収入も組織として重要な点だ。

そのために全学的な規定の整備、研究者が機器を提供するインセンティブの設定、使用可能な機器の一覧化、部局を超えた共通仕様の予約管理システムなどの具体化を促した。また利用料設定の考え方や各大学の好事例も、あわせて紹介している。

関連リンク:遠隔・自動化広がる研究機器。コロナ対応へ大学各所で購入の気炎上がる

日刊工業新聞2022年5月12日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
機器の共用化のガイドラインは国公私立問わず、すべての大学が対象だ。文科省の科学技術・学術政策局の研究環境課によると、「メーンは国立大学だがトップクラスのところも中堅も、あまり進んでいない」のだという。トップクラスの研究大学は豊富な外部資金によって、各研究者が最先端機器を購入できてしまい、全学で動きにくい面があるようだ。私立大学で熱心なケースもみられ、それは経営マインドの関係もあるのだろうか。いずれにせよ組織の経営サイドが、若手を含めた全学的な研究支援と、経営の観点で本格的に乗り出すことが必要だと感じている。

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