ニュースイッチ

毎秒400ギガビット、超高速網とつながる学術研究基盤の運用が始まった

国立情報学研究所(NII)は「学術研究プラットフォーム」の本格運用を始めた。超高速ネットワーク基盤を「SINET(サイネット)6」にアップグレードし、新整備の研究データ基盤「NII リサーチ・データ・クラウド(NII―RDC)」と融合した。またSINETを日本の社会インフラとして発展させるべく、企業などのトライアル利用もスタートした。

超高速ネットワーク基盤「SINET6」は、全国毎秒100ギガビット(ギガは10億)だったSINET5から、同400ギガビットに高度化した。全国規模では世界最速で、増大する通信量とIoT(モノのインターネット)に対応。第5世代通信(5G)などの超高速モバイルアクセス、研究分野の特徴に応じた仮想私設網(VPN)などの技術に加え接続点を増やした。

一方、研究データ基盤のNII―RDCはデータ管理基盤「GakuNin RDM」、データ公開基盤「JAIRO Cloud」、データ検索基盤「CiNii Research」で構成される。日々の研究データも共有する「オープンサイエンス」に対応するためだ。

SINETの民間利用は従来、大学などとの共同研究用に限定していたが拡大する。ビッグデータ(大量データ)を高速に安全に送る商用サービスを上回る信頼性により、医療系機関からニーズが出ているという。

出典:日刊工業新聞2022年4月5日

研究データ管理基盤の利用大学急増 今年度末43機関に

出典:日刊工業新聞2022年3月31日

国立情報学研究所(NII)は研究データ管理基盤「GakuNin RDM」の利用大学・研究機関が、2021年度末で43機関になることを明らかにした。データ分析に基づく「データ駆動型研究」や論文よりスピーディーな研究成果発信で、安全性を確保しつつ研究データを共有する仕組みで期待が高まっているためだ。20年度末の24機関から急増、22年度末はもう20機関ほど増えそうだ。

検証可能な研究データの管理は、新型コロナウイルス感染症のように研究成果をスピーディーに公開したり、研究不正を防止したりする上でも重要だ。政府は各大学などに、研究データ管理計画(DMP)やデータ検索のためのメタデータ付与など求めている。

各機関独自の体制整備も可能だが、民間サービスは高度な暗号化技術などデータの安全性の点で使いにくい。またデータの真正性保証や自動的に一部公開する仕組みなど、管理負担が大きいため、GakuNinへ期待する声が高まっている。

例えば4月に動きだす北海道国立大学機構では、北見工業大学など3国立大学間で工・農・商の研究データの掛け合わせを狙い、各大学のデータストレージを通じてGakuNinで統合する。理化学研究所はまずNIIと同じプログラムを導入し、所内のコンピューターとつなぐ。学内外で大学の研究機器を共用する場合のアクセス窓口に、GakuNinを使うケースもある。当初は旧帝大など大規模大学が中心だったが、中規模・単科の国立大学や、大規模私立大学でも利用が広がっている。

日刊工業新聞2022年4月5日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
NIIのSINETの力量は学術研究者の間ではよく知られており、今春にこれが5から6へバージョンアップとなった。一方でデータ管理基盤のRDMは動きだした段階で、研究者の認知はまだ十分でない。しかし2021年6月の政府方針で、大学や研究開発法人のデータ管理対応を求める文言が出てきたことから、組織として検討する機関が急増。NIIのRDMへの注目がうなぎ登りとなっている。

編集部のおすすめ