ニュースイッチ

研究開発と資金循環結びつける。東北大と三井住友トラストの連携の全容

東北大学と三井住友トラスト・ホールディングス(HD)は、研究開発事業と資金循環を結び付けた活動で包括連携協定を結んだ。同大100%子会社の東北大学ナレッジキャスト(仙台市青葉区)や三井住友信託銀行を活用した事業化支援や、新たな金融商品開発など”テクノロジー・ベースド・ファイナンス”を行う。

東北大と三井住友トラストHDの当面の活動の柱は四つ。(1)金融取引先企業の課題解決を大学が支援(2)大学発ベンチャー(VB)などの資金や業務提携を金融機関が支援(3)デジタルや高度エンジニアの研修(4)試作や計測実験、データシミュレーションなどの研究開発受託―だ。産学金連携でヒト・モノ・カネの循環を後押しする。

さらに科学技術の社会的インパクトに対する新たな金融手法を開発し、企業や個人で停滞する資金の循環を促す。例えば、大学発VBなど研究開発型企業を対象に信託機能を活用し、個人を含む一般投資家向けの金融商品を開発することが挙げられる。

VBへの資金支援は通常、ベンチャーキャピタルによる大口投資で行われる。これに対してリスクマネーの小口化・流動化を狙う。この時、独自技術の価値を評価・可視化することがカギとなる。国の規制緩和などにらみながら、可能性を追求していく。

日刊工業新聞2022年2月4日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
新たな金融商品のビジネスでは、産学共同出資のジョイントベンチャーも考えられるらしい。今はそのような形の国立大学の出資は認められていないが、規制緩和が近年、大きく進んでいるだけにおかしくない。こんな社会を刺激する新たな構想を提示できる大学こそ、指定国立大学だ。さらに上となる「世界に伍する研究大学」(国際卓越研究大学)を目指す各大学には、こういった提案をがんがん出してもらいたい。

編集部のおすすめ